『森と海を結ぶ菜園家族 ―21世紀の未来社会論―』

ジャケット装画:柾木 高

ジャケット装画:柾木 高

題名 森と海を結ぶ菜園家族 ―21世紀の未来社会論―
著者 小貫雅男・伊藤恵子
出版社 人文書院
発行年月 2004年10月
判型・ページ A5判、447ページ
定価 本体2,200円+税
ISBN 9784409240700

 
 人は、明日があるから、今日を生きるのです。
 21世紀、人々は、人類始原の、自由・平等・友愛の自然状態を夢見て、壮大な回帰と止揚の道を歩みはじめるのです。
 琵琶湖の東、鈴鹿山中の里山研究庵から展望する犬上川・芹川流域地域(彦根市・多賀町・甲良町・豊郷町の一市三町)。この「森と海(湖)」を結ぶ流域循環型の地域圏モデルを舞台に、未来社会への積極的な方向性を提示する。週の2日は従来型の「お勤め」で賃金収入を確保し、あとは自給自足の家庭菜園に従事するという、21世紀世界の新しいタイプの生き方としてのこの一見大胆奇抜に思える「週休5日制」の「菜園家族」構想に内在する思想は、疲弊しきった現代人に思いもかけない逆転の発想をもたらすことであろう。

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目次

はじめに

第一章 「菜園家族」構想の基礎

  1. 閉塞の時代-「競争」の果てに
      「拡大経済」と閉塞状況  市場原理と家族  「虚構の世界」   生きる原型
  2. 「菜園家族」の構想-週休五日制による
      三世代「菜園家族」  新しいタイプの“CFP複合社会”  「菜園家族」の可能性  主体性の回復と倫理  予想される困難  家族小経営の生命力
  3. 大地に明日を描く
      ふるさと-土の匂い、人の温もり  心が育つ  家族小経営の歴史性

第二章 「菜園家族」構想と今日的状況

    • 危機の中のジレンマ  誤りなき時代認識を  「構想」の可能性と実効性  誰のための、誰による改革なのか  グローバリゼーション下の選択 二一世紀の“暮らしのかたち”を求めて
  • 第三章 「菜園家族」の世界史的位置

    1. 一九世紀、苦闘と思索の足跡
        資本の論理と人間疎外  「恐慌」という名の致命傷に向き合う   新しい思想家・社会改革者の登場   オウエン構想の意義と限界   ニューハーモニー実験の光と影   資本主義の進展と新たな理論の登場  一九世紀、思想と理論の到達点  マルクスの経済学研究と『資本論』
    2. 一九世紀における未来社会論
        人類始原の自然状態  自然状態解体の論理  資本の論理と恐慌 世界恐慌の不可避性と展望  マルクスの未来社会論  導き出された共有化論 共有化の成立条件  共有化論の欠陥と誤り

    第四章 自然社会への道

    1. 生産手段の「再結合」
        B型発展の道  「菜園家族」と「地域」  特性としての揺籃期  B型発展の本格形成期  “CFP複合社会”の展開過程
    2. 人間と家族の視点から
        個体発生と「家族」  「家族」がもつ根源的な意義  人間が人間であるために  生産手段「再結合」の意義  自然社会への究極の原理  高度に発達した自然社会へ

    第五章 日本列島が辿った運命

    • 森と海を結ぶ流域循環  森から平野への移行  高度経済成長と流域循環  「日本列島改造論」  断ち切られた流域循環  終末期をむかえた「拡大経済」 幻想と未練の果てに  重なる二つの終末期
  • 第六章 森と海を結ぶ「菜園家族」

    1. 「菜園家族」と流域循環型地域圏
        森はなぜ衰退したのか  流域地域圏構想と市町村合併問題  二一世紀、山が動く 森が甦る契機  地域政策の重要性
    2. 「家族」と「地域」-共同の世界
        変化の中の「地域」概念  現存「集落」の歴史的性格 “共同の世界”を支えたもの  身近なことから  「集落」再生の意義
    3. 菜園家族エリアの構造、その意義
        「集落」の再生と「なりわいとも」  基本共同体「村なりわいとも」 森と海を結ぶ「郡なりわいとも」  非農業基盤の「匠商家族」  「匠商家族」と「なりわいとも」  「なりわいとも」の歴史的意義

    第七章 二一世紀、近江国循環型社会の形成

    1. 森と海を結ぶ流域循環型地域圏モデルの設定
        湖国近江、滋賀  近江国、十一の流域循環型地域圏モデル  aモデル選定の経緯
    2. aモデル「犬上川・芹川流域循環型地域圏」の昔と今
        aモデルの地理的範囲  平野部~多賀町の一部と甲良町・豊郷町  平野部~彦根市 山間部~多賀町  雨乞い信仰と流域地域圏  ある老夫婦の半生 民話『幸助とお花』の世界より~循環の思想~
    3. 地域認識の深化と変革主体
        作業仮説の設定とその意義  螺旋円環運動と変革主体の形成
    4. 犬上川・芹川流域循環型地域圏形成の目標と課題
        流域循環型地域圏構築の基本姿勢  土地利用の視点から-田園地帯-  土地利用の視点から-森林地帯-  森再生の決め手  彦根市街地および三町の中核街  自立的な経済圏成立の前提  国・地方自治体の役割と政策投資
    5. 近江国循環型社会から世界へ
        近江国広域圏の一体性  歴史における主体的実践の役割  理想を地でゆく
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    あとがきにかえて
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    『菜園家族レボリューション』

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    題名 菜園家族レボリューション
    著者 小貫雅男
    出版社 社会思想社・現代教養文庫
    発行年月 2001年11月
    判型・ページ 文庫版、208ページ
    定価 本体560円+税
    ISBN 9784390116459 ※絶版につき、ご注文・お問い合わせは、里山研究庵Nomadまで。

     市場原理至上主義アメリカ型「拡大経済社会」から、「菜園家族」基調のCFP複合社会へ。巨大化の道の弊害と行き詰まりが浮き彫りになった今、その評価を問いなおし、家族小経営の持つ優れた側面を再考する。
     人間を大地から引き離し、虚構の世界へとますます追いやる市場競争至上主義「拡大経済」に、果して未来はあるのだろうか。ここに提起する“大地に生きる”人間復活の唯一残されたこの道に、“菜園家族レボリューション”の思いを込める。

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    本書の「プロローグ」より

     モンゴル遊牧社会の研究をはじめてから、いつのまにか長い歳月が過ぎてしまいました。そ の間、草原や山岳・砂漠の遊牧民家族と共に生活し、一年あるいは二年という長期の住込み 調査や、短期のフィールド調査をまじえながら、日本とモンゴルの間を何回も行き来すること になりました。

     ここに提起される日本社会についての未来構想は、この両極を行き来しながら、風土も暮ら しも価値観も、日本とは対極にあるモンゴルから日本を見る視点、そして、そこから生ずる何 とも言いようのない不協和音を絶えず気にしつつ、長年考えてきたことが下敷きになっている のかもしれません。

     モンゴルの遊牧民からすれば、日本は「輸入してまで食べ残す不思議な国ニッポン」に映る ことでしょう。本当は憤りさえ覚えているのかもしれません。高飛車に「あんたたちは、経済と いうものを分かっちゃいないんだよね」などと言って、世事に擦れた感覚に、薄汚れた常識を 振り回し、せせら笑ってすませる場合ではないのです。

     話は前後しますが、こうした日本とモンゴルの間の長年の行き来の中でも、とくに1992年秋からの一年間、山岳・砂漠の村ツェルゲルでの生活は、日本社会のこの未来構想を考 える上で、貴重な体験になっています。

    本書の「あとがき」より

    ……“菜園家族レボリューション”。これを文字どおりに解釈すれば、菜園家族が主体となる 革命のことを意味しているのかもしれません。しかし、“レボリューション”には、自然と人間界 を貫く、もっと深遠な哲理が秘められているように思えるのです。それは、もともと、旋回であ り、回転でありますが、天体の公転でもあり、季節の循環でもあるのです。そして何よりも、原 点への回帰を想起させるに足る、壮大な動きが感じとれるのです。イエス・キリストにせよ、 ブッダにせよ、わが国近世の希有な思想家安藤昌益にせよ、あるいはルネサンスやフランス 革命にしても、レボリューションの名に値するものは、現状の否定による、原初への回帰の情 熱によって突き動かされたものなのです。現状の否定による、より高次な段階への止揚(アウ フヘーベン)と回帰。それはまさに、「否定の否定」の弁証法なのです。現代工業社会の廃墟 の中から、それ自身の否定によって、田園の牧歌的情景への回帰と人間復活の夢を、こ の“菜園家族レボリューション”に託して、結びにかえたいと思います。

    目次

    プロローグ

    第一章 閉塞の時代―「競争」の果てに

    1. 「拡大系の社会」と閉塞状況
    2. 市場原理と家族
    3. 「虚構の世界」
    4. 生きる原型

    第二章 「菜園家族」の構想―週休五日制による

    1. 三世代「菜園家族」
    2. 新しいタイプの“複合社会”
    3. 「菜園家族」可能性
    4. 主体性の回復と倫理
    5. 予想される困難
    6. 家族小経営の生命力

    第三章 大地に明日を描く

    1. ふるさとー土の匂い、人の温もり
    2. “心が育つ”
    3. 理想を地でゆく
    4. 家族小経営の歴史性

    第四章 ふたたび「菜園家族」構想について

    1. 二十一世紀、人間復活の時代
      • 『四季・遊牧』の現代性
      • 問題は根深い
      • 大地に明日を描く
    2. 閉鎖からの脱出
      • 危機の中のジレンマ
      • 誤りなき時代認識を
      • 「構想」の可能性と実効性
      • 誰のための、誰による改革なのか
      • グローバリゼーション下の選択
      • 二十一世紀の“暮らしのかたち”を求めて
    3. 里山研究庵

    補章 『四季・遊牧ーツェルゲルの人々』をめぐって

    1. 『四季・遊牧ーツェルゲルの人々』について
      • 作品のあらすじと構成(伊藤恵子)
      • 解説ー独自の世界にひたる
    2. 新しい鑑賞のスタイルの創造をめざして
      • “お弁当二つの上映会”
      • 『四季・山村ー朽木谷の人々』の制作
    3. 辺境からの視点
      • 異郷の涙
      • 究極のアウトドア
      • いのちの初夜
      • どぜう
      • 北国の春
      • 早春の賦

    エピローグ

    文庫版へのあとがき
    解説(伊藤恵子)

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    『週休五日制による三世代「菜園家族」酔夢譚』

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    題名 週休5日制による 三世代 菜園家族酔夢譚
    著者 小貫雅男
    発行 Nomad
    発行年月 2000年
    判型・ページ B5版、89ページ
    定価 頒価:350円(送料別)ご注文・お問い合わせ先:里山研究庵Nomad

    「大地」から切り離され、「いのち」からますます遠ざかる現代都市型社会に生きる私たち。しかしどうあがいても、この母なる大地から離れては生きていけない。長年のモンゴル遊牧社会のフィールド調査から見えてきた一つの「生きる原型」。そこから提起する21世紀・日本のグランドデザイン。