長編連載「いのち輝く共生の大地―私たちがめざす未来社会―」第1章(その3)

長編連載
いのち輝く共生の大地
―私たちがめざす未来社会―

第一部 生命系の未来社会論、その生成と到達
―自然界と人間社会を貫く生成・進化の普遍的原理を基軸に―

第1章
 生命系の未来社会論、その具現化の道「菜園家族」社会構想の問題意識
 (その3)

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長編連載「いのち輝く共生の大地」
第1章(その3)
(PDF:601KB、A4用紙12枚分)

フクロウ(銅版画調・カラー)

3.今こそ近代の思考の枠組み(パラダイム)を転換する ―“生命系の未来社会論”の措定―

未踏の思考領域に活路を探る
 「菜園家族」とは、大地から引き離され、自立の基盤を失った現代の「賃金労働者」が、自立の基盤としての「菜園」との再結合を果たすことによって創出される新たな家族形態のことである。
 それはつまり、大地から遊離し根なし草同然となった不安定な現代賃金労働者(サラリーマン)が、大地に根ざして生きる自給自足度の高い前近代における「農民的人格」との融合を果たすことによって、21世紀の新たな客観的諸条件のもとで「賃金労働者」としての自己を止揚(アウフヘーベン)し、抗市場免疫に優れた、より高次の人間の社会的生存形態に到達することを意味している。

 本連載で提起する“生命系の未来社会論”の具現化としての「菜園家族」社会構想を、懐古趣味的アナクロニズムの妄想として一蹴するのは簡単ではあるが、それでは人間の存在自身を否定する、非正規労働という身分保障もない、差別的低賃金の不安定雇用が蔓延する今日の事態を乗り越え、非人間的で非人道的な現実をどうするかの解答にはならない。
 これに答えるためには、結局、近代の所産である「賃金労働者」という人間の社会的生存形態が、はたして永遠不変のものなのか、という根源的な問いに行き着かざるを得ないであろう。

 19世紀以来今日まで、未来社会論の基調は、生産手段の社会的規模での共同所有と、これに基づく共同管理・運営を優先・先行させることにあった。そして、新しく生まれるこの社会主義社会の初動の段階において主導的役割を果たすべき構成員は、近代に引き続き「賃金労働者」であることが暗黙の前提となっていた。
 しかし、今やこの理論自体に根本からメスを入れ、新たなパラダイムのもとに、19世紀以来拘泥してきた未来社会論を止揚(アウフヘーベン)しなければならない時に来ている。

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長編連載「いのち輝く共生の大地―私たちがめざす未来社会―」第1章(その2)

長編連載
いのち輝く共生の大地
―私たちがめざす未来社会―

第一部 生命系の未来社会論、その生成と到達
―自然界と人間社会を貫く生成・進化の普遍的原理を基軸に―

第1章
 生命系の未来社会論、その具現化の道「菜園家族」社会構想の問題意識
 (その2)

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長編連載「いのち輝く共生の大地」
第1章(その2)
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新緑の大君ヶ畑集落(犬上川北流の川岸)
犬上川北流のほとりに佇む限界集落・大君ヶ畑(滋賀県・鈴鹿山中)

2.生命本位史観に立脚し「家族」と「地域」の再生を探る

いのちの再生産とモノの再生産の「二つの輪」が重なる家族が消えた
 かつては、いのちの再生産の輪と、モノの再生産の輪が、二つとも「家族」という場において重なっていた。それゆえ家族は、大地をめぐる自然との物質代謝・物質循環のリズムに合わせて、時間の流れに身をゆだね、ゆったりと暮らしていた。
 ところが、世界史的には18世紀のイギリス産業革命以降、社会の分業化が急速にすすむ中で、不可分一体のものとして存在していた「農業」と「工業」は分離し、まずは「工業」が、次いで「農業」も家族の外へと追い出されていく。その結果、「家族」という場において、いのちの再生産とモノの再生産の「二つの輪」が重なる部分はますます小さくなってしまった。

 戦後日本の高度経済成長は、こうした傾向にいよいよ拍車をかけ、その極限にまで追いやっていった。それゆえ今日の家族は、生きるために必要な食料はもとより、育児・教育、介護・医療・保険等に至るすべてを、家の外で稼いだ賃金で賄わなければならなくなった。このことは同時に、人間が自然から乖離し、無機質で人工的な世界の中で家族がまるごと市場に組み込まれ、熾烈な競争にもろに晒(さら)されることを意味している。

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長編連載「いのち輝く共生の大地―私たちがめざす未来社会―」第1章(その1)

長編連載
いのち輝く共生の大地
―私たちがめざす未来社会―

第一部 生命系の未来社会論、その生成と到達
―自然界と人間社会を貫く生成・進化の普遍的原理を基軸に―

第1章
 生命系の未来社会論、その具現化の道「菜園家族」社会構想の問題意識
 (その1)

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長編連載「いのち輝く共生の大地」
第1章(その1)
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大きなワシ(銅版画調・カラー)

1.21世紀の今、なぜ近代の人間の社会的生存形態「賃金労働者」を問い直すのか

迫り来る世界的危機のまっただ中で ―過剰の中の貧困
 投機マネーに翻弄(ほんろう)される世界経済。新型コロナウイルス・パンデミックのさなかにあっても、一握りの巨大金融資本、巨大企業、富裕層にますます莫大な富が集積する一方で、まともな医療さえ受けられず、路頭に迷う圧倒的多数の民衆。

 それでもこの機に乗じて、DX(デジタル・トランスフォーメーション)なるものによる新たな成長への幻想を演出しつつ、これまで急速に拡大させてきたにわか仕込みの観光産業※1 と、とどの詰まりはその背後にある巨大金融資本救出のための「Go To トラベル」だの、「Go To イート」だのと、感染拡大防止とは真逆の愚策に1兆数千億円もの国民の血税を注ぎ込む。ここに至ってもなお「浪費が美徳」の経済を煽(あお)る姿に、やるせない思いがつのる。
 果てには岸田自民党政権の軍拡大増税に至っては、狂気の沙汰である。ついに、かつての軍国日本の道に一歩踏み込んでしまった。オオタニサン!!などと浮かれている場合ではないのである。

 一方、容赦なく迫りくる地球温暖化による異常気象と、世界的規模での食料危機。国内農業を切り捨て、農山村を荒廃させ、食料自給率過去最低の37パーセント(2018年度)に陥った日本。2024年のこの夏には、小売店の店頭で米の品切れが現実に起こりうるのだということを、多くの国民が一瞬ではあるが実感することとなった。

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長編連載「いのち輝く共生の大地―私たちがめざす未来社会―」プロローグ(その2)

長編連載
いのち輝く共生の大地
―私たちがめざす未来社会―

プロローグ (その2)
 ―身近な過去を振り返り、はるか彼方の「未来」を考える―

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長編連載「いのち輝く共生の大地」
プロローグ(その2)
(PDF:593KB、A4用紙10枚分)

星空と木

迷走する新型コロナウイルス対策
 「わずか1ヵ月半で流行をほぼ収束できた。日本モデルの力を示した」。新型コロナウイルスの緊急事態宣言を全国で解除した2020年5月25日、安倍晋三首相(当時)は、こう言い放って胸を張った。その後、根拠のない楽観ムードはいっそう強まる一方であった。

 同年6月24日、西村康稔経済再生相は、専門家会議(座長 脇田隆字・国立感染症研究所長)を廃止し、感染防止と社会経済活動の両立を図る必要があるとして、感染症の専門家以外にも、経済、自治体関係者や、情報発信の専門家らを加え、第二波に備えるとした。特措法に基づき、政権の責任転嫁の装置とも言うべき新たな会議体「新型コロナウイルス感染症対策分科会」なるものを設置すると表明。これだけはなぜかそそくさと実行に移した。

 世界規模で見れば、アメリカ、イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ドイツなどEU諸国、ロシア、ブラジルをはじめとする中南米、インド、中東、アフリカなど、依然としてコロナが猛威を振るう国や地域が多く、感染増加ペースは減速どころか、加速していった。

 こうした厳しい現実に目を伏せ、わが国の政財界の主導的上層部は、「経済を回し、新しい日常を取り戻す」を呪文のごとく繰り返し唱えつつ、国民には「新しい生活様式」をと自助努力のみを促し、性懲りもなく刹那的「体験型」消費形態なるものを取り戻し、何が何でも経済を「好転」させようとした。
 「Go To キャンペーン」と称して、「Go To トラベル」、「Go To イート」、「Go To イベント」、「Go To 商店街」などと次々と繰り出し、コロナ以前の市場原理至上主義「拡大経済」、つまり人間の欲望を煽り、際限なく肥大化させ、経済格差、人間の分断と対立を助長する、かつてのあの非人道的で忌まわしい社会・経済システムにとにかく戻したいというのである。そして、その対価としての多大な最終的犠牲は、とどのつまり民衆につけ回すのである。

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長編連載「いのち輝く共生の大地―私たちがめざす未来社会―」プロローグ(その1)

長編連載
いのち輝く共生の大地
―私たちがめざす未来社会―

プロローグ (その1)
 ―身近な過去を振り返り、はるか彼方の「未来」を考える―

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長編連載「いのち輝く共生の大地」
プロローグ(その1)
(PDF:484KB、A4用紙7枚分)

夏の銀河 trim3

意志あるかのように人間どもの隙を突いてきた新型コロナウイルス
 1990年代初頭、ソ連社会主義体制の崩壊を境に、第二次大戦後の世界を規定してきた米ソ二大陣営の対立による冷戦構造が消滅し、アメリカ単独覇権体制が成立することになる。
 しかしそれも束の間、アメリカ超大国の相対的衰退傾向の中、その弛緩に乗ずるかのように、西欧諸国、ロシアといった旧来の伝統的大国に加え、中国など新興大国が入り乱れる地球規模での新たな多元的覇権抗争の時代が幕を開けた。
 今や世界は憎しみと暴力の坩堝(るつぼ)と化し、報復の連鎖はとどまることを知らない。

 資本は今なお飽くなき自己増殖運動を繰り返しながら、新たな市場を求めて世界を蚕食し、ますます巨大化への道を突き進んでいる。
 20世紀70年代に入ると、資本の古典的とも言うべき増殖手法は、利殖家にとっては甚だ迂遠で非効率的と看做され、IT先端技術の発達とも相俟って、手っ取り早くしかも瞬時に、マネーが巨額のマネーを生み出す新たな回路が考案・開発されていく。
 そして今日、いよいよ人間を大地から引き離し、虚構と欺瞞、人間欲望の極限の世界にとことん追い遣る「経済の金融化」とも言うべき新たな恐るべき時代に突入したのである。

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長編連載「いのち輝く共生の大地」の目次一覧(修正版)のお知らせ

 長編連載「いのち輝く共生の大地 ―私たちがめざす未来社会―は、当初の予定より1ヵ月ほど遅れることになりますが、まもなく9月1日(日)よりスタートいたします。
 7月末にお知らせした≪目次一覧≫に若干の修正を加えましたので、あらためて下記に掲載いたします。
 連載開始まで、今しばらくお待ちいただければ幸いです。

天文台と北天の星の軌跡trim3(横に細長くトリミング)
天文台と北天の星の軌跡

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長編連載「いのち輝く共生の大地」
≪目次一覧≫(2024.8.24修正版)
(PDF:532KB、A4用紙10枚分)

長編連載「いのち輝く共生の大地 ―私たちがめざす未来社会―

≪目次一覧≫(2024.8.24修正版)
  進捗状況により、細部を若干、変更することがあります。

プロローグ ―身近な過去を振り返り、はるか彼方の「未来」を考える―

夏の銀河(横に細長くトリミング)

(その1)
 意志あるかのように人間どもの隙を突いてきた新型コロナウイルス
 新型コロナウイルスと気候変動の両者を全一体的(ホリスティック)に捉える
 新型コロナウイルスがもたらした社会経済的衝撃、その真相と本質
 突きつけられた近代特有の人間の社会的生存形態「賃金労働者」の脆弱性

(その2)
 迷走する新型コロナウイルス対策
 21世紀未来社会構想の不在、それがもたらす気候変動・パンデミック下の混迷
 “生命系の未来社会論”を探る ―大地と人間の高次再融合
 民衆の新たな生活世界を築く ―わが国の、世界の腐り切った特権的「政治」を乗り超えて

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新・長編連載のお知らせ

≪新・長編連載のお知らせ≫

 若干の準備期間をおいた後、本年8月2日(金)(予定)より、「いのち輝く共生の大地 ―私たちがめざす未来社会―(仮題)と題して、新・長編連載を開始します。
 どうぞ引き続きご覧ください。

青空に白い雲(横長)

新・長編連載の主旨

米中露「三超大国」を基軸に
先進資本主義諸国入り乱れての
醜い多元的覇権抗争の時代。

  国民主権を僭称する
  一握りの政治権力者は
  分断と対立と憎しみを煽り
  民衆同士の凄惨な殺し合いを強制する。

今や世界は生命を蔑ろにして恥じない
倫理敗北の時代に突入している。

  今こそ
  自然観と社会観の分離を排し
  大自然界の生成・進化を貫く
  「適応・調整」(=「自己組織化」)の原理を
  両者統一の普遍的原理に止揚し
  社会変革のすべての基礎におく。

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連載“高次自然社会への道” 終了にあたって≪5≫

連載“高次自然社会への道” 終了にあたって≪5≫

今や猶予なき喫緊の国民的課題
「菜園家族的平和主義」の構築
―いのちの思想を現実の世界へ―

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連載 “高次自然社会への道” 終了にあたって≪5≫
「菜園家族的平和主義」の構築 ③
(PDF:657KB、A4用紙12枚分)

いて座 散光星雲

日米軍事同盟のもと
いつまでもアメリカの権力に追従し
東アジアの民衆に背を向け
この地域世界に
撹乱をもたらしている場合ではないのである。
 今こそ
 自らの「菜園家族的平和主義」の理念を高く掲げ
 この道の選択を
 いよいよ決断する時に来ているのではないか。

4 東アジア地域世界に宿命的に集中胚胎するグローバル危機の震源

あまりにも片寄った情報の氾濫の中で考える ―朝鮮半島情勢をめぐって
 これまで超大国アメリカをはじめ、日本など先進資本主義諸国は、きまって仲間同士徒党を組み、「テロとの戦い」とか「核不拡散」とかを口実に、特定の国を仮想敵国に仕立て、対立と敵愾心を煽ってきた。
 なかんずく極東においては、長きにわたって、米韓合同軍事演習が大々的に展開されてきた。と同時に、アメリカとそれに追従する日本の権力的為政者は、口を揃えて武力威嚇の本音とその本質を眩(くら)ます欺瞞の常套句「抑止力」とか「対話と圧力」などと呪文のように繰り返し、自らは日米軍事同盟のもと、日本国憲法第九条をかなぐり捨て、軍事力を際限なく強化していく。日米合同軍事訓練を強行し、果てには「自衛のため」だと、敵基地先制攻撃をも辞さないと威嚇する。

威嚇する多頭のドラゴン(銅版画調・モノクロ)

 緊張を高めてきたのは、果たして北朝鮮の側だけなのか。あるいは、中国側だけなのか。
 わが国における情報は、あまりにも一方的で、片寄りすぎているのではないか。
 軍部主導の大本営発表を鵜呑みに、国民こぞって大戦へとのめり込んでいったかつての記憶が、今鮮やかに甦ってくる。

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連載“高次自然社会への道” 終了にあたって≪4≫

連載“高次自然社会への道” 終了にあたって≪4≫

今や猶予なき喫緊の国民的課題
「菜園家族的平和主義」の構築
―いのちの思想を現実の世界へ―

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連載 “高次自然社会への道” 終了にあたって≪4≫
「菜園家族的平和主義」の構築 ②
(PDF:460KB、A4用紙7枚分)

緑色の鹿

どんな理由があろうとも
戦争には決して組しない。
これが
あまりにも凄惨な犠牲の末に
やっと辿り着いた
私たちの結論であり
未来への希望の光ではなかったのか。

3 非同盟・中立の自然循環型共生の暮らしと平和の国づくり

 嘆かわしいことに、今日の世界で起きている事態は、巨額の軍事費を費やし、最新の科学技術の粋を凝らしてつくり上げた、政・官・財・軍・学の巨大な国家的暴力機構から繰り出す超大国の恐るべき軍事力と、それにひきかえ、自己のいのちと他者のいのちを犠牲にすることによってしか、理不尽な抑圧と収奪に対する怒りを表し、解決する術を見出すことができないところにまで追い詰められた「弱者の暴力」との連鎖なのである。

 かつてガンジーが、インドの多くの民衆とともに「弱者」の側から示した精神の高みからすれば、大国の圧倒的に強大な軍事力、すなわち暴力によって「弱者の暴力」を制圧、殲滅し、暴力の連鎖をとどめようとすることが、いかに愚かで恥ずべきことなのかをまず自覚すべきである。

 今日における集団的自衛権の行使とは、わが国がまさにこの「弱者」と「強者」の暴力の連鎖の一方の側に加わり、世界の圧倒的多数を占める「弱者」を敵に回し、利害や権益を共有する超大国、そして諸大国とともに、「自衛」と称して「強者の暴力」に加担するということなのではないのか。これでは暴力の連鎖をとどめるどころか、ますます拡大させていく。

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連載“高次自然社会への道” 終了にあたって≪3≫

連載“高次自然社会への道” 終了にあたって≪3≫

今や猶予なき喫緊の国民的課題
「菜園家族的平和主義」の構築
―いのちの思想を現実の世界へ―

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連載 “高次自然社会への道” 終了にあたって≪3≫
「菜園家族的平和主義」の構築 ①
(PDF:528KB、A4用紙9枚分)

アザラシ

人は誰しも
決して避けることのできない
死という宿命を背負いながらも
懸命に生きている。
 そもそも人間とは
 不憫としか言いようのない
 不確かな存在ではなかったのか。
だからこそなおのこと
 人は
 同じ悲哀を共有する同胞(きょうだい)として
 せめても他者に
 とことん寛容でありたいと
 願うのである。

今や常態化した
権力者による
「マッチポンプ」式の卑劣な応酬。
 だが、これだけは決して忘れてはならない
 戦争とは、結局、どんな理由があろうとも
 民衆に
 民衆同士の殺し合いを強いる
 国家権力による
 極悪非道の最大の犯罪そのものなのだ。

1 いのち軽視、いのち侮辱の「戦争俗論」の跳梁跋扈を憂える
 ―卑劣な企み「マッチポンプ」の繰り返し―

憎しみと暴力の坩堝(るつぼ)と化した世界 ―世界の構造的不条理への反旗
 今から11年前の2013年1月16日、はるか地の果てアルジェリアのサハラ砂漠の天然ガス施設で突如発生した人質事件は、わずか数日のうちに、先進資本主義大国および現地政府軍の強引な武力制圧によって、凄惨な結末に終わった。

 こうした中、同年1月28日、安倍晋三首相(当時)は、衆参両院の本会議で第二次安倍内閣発足後、初めての所信表明演説を行った。
 演説の冒頭、アルジェリア人質事件に触れ、「世界の最前線で活躍する、何の罪もない日本人が犠牲となったことは、痛恨の極みだ」と強調。「卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難する」とし、「国際社会と連携し、テロと闘い続ける」と声高に叫び胸を張った。

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