“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その7―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その7 ―

記憶に甦る「菜園家族の世界」
―21世紀生命系の未来社会の原形―

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要諦再読 ―その7―
“記憶に甦る「菜園家族の世界」”
(PDF:568KB、A4用紙8枚分)

大豆

甦る大地の記憶
心ひたす未来への予感

 この「要諦再読」では、“21世紀生命系の未来社会”具現化の道である「菜園家族」社会構想を深め、考えていくのであるが、ここでは概念と論理だけで展開する抽象レベルの論述を避け、記憶に甦る原風景から、まずは「菜園家族の世界」の原形を身近に具体的にイメージできる世界に描くことからはじめよう。

 ところで、画家・原田泰治の“ふるさとの風景”は、現代絵画であると言われている。日本からは、もうとっくに失われてしまった過去の風景でありながら、そこには現代性が認められるという。
 たしかな鳥の目で捉えるふるさとの風景の構図。しかも、心あたたかい虫の目で細部を描く、彩り豊かな原田の絵画の世界には、きまって大人と子どもが一緒にいる。大人は何か仕事をし、子どもたちはそのそばで何かをしている。人間の息づかいや家族の温もりが、ひしひしとこちらにむかって伝わってくる。込みあげてくる熱いものを感ぜずにはおられない“心の原風景”が、そこにはあるからであろう。21世紀をむかえた今、子どもと家族の復権を無言のうちに訴えかけてくる。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その6―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その6 ―

人間の「共感能力」の復権と非戦・平和の礎
―地域に築く抗市場免疫のライフスタイル―

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要諦再読 ―その6―
“人間の「共感能力」の復権と非戦・平和の礎”
(PDF:545KB、A4用紙8枚分)

雲から顔を覗かせる太陽(銅版画調)

 既に見てきたように、ヒトの「常態化した早産」が原因となって、「未熟な新生児」を受け入れ、長期にわたって庇護する必要性から、他の哺乳動物には見られない、人間に独特の発達事象「家族」の発生を見ることになる。
 この稀に見る「家族」を基底に、人間発達の他の3つの事象「言語」、「直立二足歩行」、「道具」が相互に作用し合い、ヒトの脳髄は特異な発達を遂げてきた。

 ここでもう1つ見落としてはならない大切な発達事象として、人類始原のヒトに特有の感性、すなわち原初的「共感能力」が芽生えてきたことをここで再確認しておきたい。
 二百数十万年と言われる人類史の大半を占める、長期にわたる原始的無階級社会、つまり人類始原の自然状態にあっては、ヒトに特有のこの原初的「共感能力」、すなわち他者の痛み、他者の喜怒哀楽を自らのものとして受け止め、共振・共鳴する能力は、緩慢とは言え、徐々に繊細かつ豊かな発達を遂げてきたと言えよう。

 しかし、「道具」の発達に伴って生産力が発展するにつれ、個々人の労働によって生み出される剰余価値の収奪が可能になると、人間による人間の「規制・統制・支配」がますます強化されていく。それに従って、長い時間をかけ、着実にゆっくり発達してきたヒトに特有のこの原初的「共感能力」は、次第に揺らぎはじめる。
 特に18世紀イギリス産業革命に象徴される近代以降、資本主義の発達に伴って、人間の欲望は際限なく拡大し、人々は狭隘な利己的関心へと走り、分断されていく。
 こうして、人類始原のヒトのこの原初的「共感能力」の発達は阻害されていった。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その5―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その5 ―

資本の自己増殖運動と麻痺する「共感能力」
―人間欲望の際限なき拡大―

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要諦再読 ―その5―
“資本の自己増殖運動と麻痺する「共感能力」”
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ドラゴン(銅版画調)

 生命系の未来社会論具現化の道である「菜園家族」社会構想による日本社会は、結局、縮小再生産へと向かい、じり貧状態へと陥っていくのではないか、という危惧の念を一般に抱きがちであるが、果たしてそうなのであろうか。
 この「要諦再読―その5―」、および次回の「―その6―」では、この危惧と、生命史上稀に見る、人類始原の自然状態以来の、人間特有の感性とも言うべき原初的「共感能力」の問題を念頭に置きながら、話を進めていきたい。

 戦後わが国は、科学技術という知的資産を最大限に活用して産業を発展させ、高い経済成長をもって国際経済への寄与を果たすとする、「科学技術立国」なるものをめざしてきたし、これからもめざそうとしている。しかし、はたして私たちは、これを手放しで喜ぶことができるのであろうか。

 科学技術は市場原理と手を結ぶやいなや、人間の無意識下の欲望を際限なく掻き立て、煽り、一挙に暴走をはじめ、ついには計り知れない惨禍をもたらす。2011年3・11フクシマ原発苛酷事故は、その象徴的な事件であった。科学技術はいつの間にか本来の使命から逸脱し、経済成長の梃子の役割を一方的に担わされる運命を辿ることになったのである。

 「菜園家族」社会構想では、労働の主体としての人間の社会的生存形態に着目し、何よりもまずそれ自体の変革を通じて、未来のあるべき社会の姿を提起しているのであるが、ここでは、労働と表裏一体の関係にある資本の側面、とりわけ資本の自己増殖運動と、それに触発される人間欲望の問題を科学技術との関連で考えていきたい。

 つまり、「菜園家族」という新たな人間の社会的生存形態の創出が、資本の自己増殖運動の歴史的性格と、その制約のもとで歪められてきた科学技術にいかなる変革をもたらすことになるのか。そして、「菜園家族」の創出によって、資本の自己増殖運動の欲望原理のもとで衰退しつつある、人類始原以来の人間に特有の原初的「共感能力」をどのように復活・成熟させていくことが可能性なのか。このこととの関わりで、未来社会はどのように展望されるのか、少なくともその糸口だけでも見出したいと思う。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その4―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その4 ―

特異な発達を遂げたヒトの脳髄
―“諸刃の剣”とも言うべきその宿命―

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要諦再読 ―その4―
“特異な発達を遂げたヒトの脳髄”
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人間の頭(銅版画調)

「道具」の発達と生産力の爆発的な発展 ―ヒトの脳髄、自然界からの皮肉な贈り物
 既に見てきたように、「常態化された早産」によってこの世に現れた、脳髄の未成熟な「頼りない能なし」であるヒトの新生児は、長期にわたる「家族」の緊密な庇護のもとに成長する。どのようにも変えうる可能性を秘めたこの未成熟で柔らかな脳髄は、「家族」といういわば原初的社会の刺激を繰り返し受けつつ、他の哺乳類には見られない、人間に特有な異常な発達を遂げていく。
 この「家族」を基盤に、人間発達のその他の3つの事象、すなわち「言語」、「直立二足歩行」、「道具」が相互に緊密に作用し合い、連動しつつ、人間の脳髄のさらなる発達を促していく。

 すべての動物がそうであるように、人間も自然との間の物質代謝過程の中ではじめて、生命を維持していくことができる。人間の場合、この物質代謝過程を成立させているのが労働である。この人間労働は、自然を変えると同時に、人間自身をも変革し、人間に特有の脳髄の発達をさらに促していく。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その3―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その3 ―

「家族」の衰退と社会の根源的危機
―「道具」の発達と連動して―

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要諦再読 ―その3―
“「家族」の衰退と社会の根源的危機”
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柱時計(銅版画調)

人間に特有な「道具」の発達が人類史を大きく塗り替えた
 受精卵の子宮壁への着床から成人に至る人間の個体発生の過程は、人類が出現して以来、これまでも繰り返されてきたし、これからも永遠に繰り返されていくであろう。
 だとすれば、「常態化された早産」によってあらわれる脳の未成熟な「たよりない能なし」の新生児も、これから先も永遠に繰り返されて、母胎の外にあらわれてくることになるであろう。

 子宮内の変化の少ない温和な環境から、突然外界にあらわれた新生児の新たな環境は、母の胎内とはまったくちがったものである。それは、「家族」という原初的ないわば社会的環境と、それをとりまく大地という自然的環境、この2つの要素から成り立っている。
 人類が出現した時点から数えても、今日まで少なくとも二百数十万年もの間、人間の赤ちゃんは、子宮内の温和な環境から、突然、この2つから成る環境、すなわち原初的な社会環境である「家族」と、大地という自然的環境に産み落とされ続けてきたことになる。

 昔と変わらず今日においても、胎外に生まれ出たこの未完の素質を最初に受け入れ、「養護」する場は、ほかでもなく「家族」であり、それをとりまく大地である自然なのである。そして、どのようにでも変えうる可能性を秘めたその未熟な脳髄は、繰り返しこの「社会」と「自然」という2つの環境から豊かな刺激を受けつつ変革され、人間特有の発達を遂げながら、他の動物とは際立った特徴をもつ人間につくりあげられてきた。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その2―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その2 ―

「家族」と人間、その歴史的奇跡の淵源

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要諦再読 ―その2―
“「家族」と人間、その歴史的奇跡の淵源”
(PDF:450KB、A4用紙6枚分)

人間の目(銅版画調)

人間の個体発生に生物進化の壮大なドラマが
 人間の生涯は、たかだか60年とか70年、長くても80年とか90年に限られた短いものである。この人間の生涯は、卵子と精子の受精によってはじまる。
 周知のように、受精卵は子宮壁粘膜に着床すると、子宮内で胎児として発育し続け、十月十日(とつきとおか)の後に産まれる。胎児が母体外に産まれ出ると、胎児と胎盤を結んでいたへその緒は切断され、それと同時に新生児は、呼吸・排泄・摂食などを自分の力でやらなければならなくなる。

 しかし、誕生間もない新生児は、まだ自分の力だけで生きていく能力はない。何よりもまず母の授乳を受け、「家族」という厚い庇護のいわば胞膜の中で成長する。やがてことばを覚え、一般の哺乳動物のように四つ足で這うことからはじめ、二足直立歩行へと発達を遂げ、様々な発育段階を経て成人に達する。

 この人間の受精卵から成人までの発達過程(個体発生)に注目すると、生物進化の道すじ(系統発生)を推測することができると言われている。これに関連して、ドイツの動物学者ヘッケル(1834~1919)は、「個体発生は、系統発生を繰り返す」という有名なテーゼを残している。
 つまり、母体内で胎児として発育を続け、やがて産み出され成人になるまでのわずか十数年の個体発生の過程には、三十数億年前といわれる生命の発生の始原から、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を経て人類の出現に至る生物進化の過程が凝縮されている、というのである。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読―その1―

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―その1―

 「家族」評価の歴史的経緯をめぐって

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要諦再読 ―その1―
“「家族」評価の歴史的経緯をめぐって”
(PDF:372KB、A4用紙5枚分)

フクロウ(銅版画調)

年頭に岸田首相が打ち出した「異次元の少子化対策」が
今、国会でにわかに取り沙汰されている。
しかし、根源的視点が抜け落ちたまま
議論が進行していると言わざるを得ない。

 シリーズ“21世紀の未来社会”(全13章)の
 第四章「人間そして家族、その奇跡の歴史の根源に迫る」
 https://www.satoken-nomad.com/archives/1924
 を基軸に、読者のみなさんとともに
 もう一度、考えを深めてみたいと思う。

これまで「家族」については
歴史的に実にさまざまな評価が
なされてきた経緯がある。
 特に近代に入ってもその否定的評価は根強く
 さまざまな問題を引き起こしている。
 旧統一教会や自民党に根強い
 古色蒼然たる家父長的家族観なども
 その典型と言えよう。

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“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の要諦再読のスタートにあたって

“シリーズ21世紀の未来社会(全13章)”の
要諦再読 ―スタートにあたって―

  民衆の生活世界を築く
―腐り切ったわが国の「政治」を超えて―

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要諦再読 ―スタートにあたって―
“民衆の生活世界を築く”
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森と夜空

21世紀における
資本主義超克の
人間復活のレボリューション。
 根なし草同然の賃金労働者と
 生産手段との「再結合」による
 抗市場免疫の「菜園家族」を基軸に展開する
 民衆の生活世界の構築。
  菜園家族レボリューション。

広大無窮の自然界を母胎に
生成・進化を遂げてきた人間社会。

 自然界と人間社会両者を貫く生成・進化の
 元来あるべき「適応・調整」(「自己組織化」)※1 の普遍的原理の
 決定的乖離の行き着く先。

それは、人間社会が大自然界のただ中にありながら
あたかも悪性の癌細胞の如く
増殖と転移を限りなく繰り返し
人間どもの飽くなき欲望の赴くままに
生命の惑星、地球を丸ごと
容赦なく蝕み尽くしていく
宿命的とも言うべき結末なのだ。

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軍国大増税の岐路に立つ日本 ―腐り切ったわが国の政治―

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“軍国大増税の岐路に立つ日本”
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オリオン座大星雲

ウクライナ戦争
台湾有事を口実に
わが国の根本規範をかなぐり捨て
軍国日本、戦争の道へと
超大国アメリカ追従の大合唱。

 1月23日からはじまる
 「軍拡大増税」「軍拡国債」の通常国会。
重大な岐路に立たされている今こそ
新たな決意のもと
一人ひとりがそれぞれの創意性を発揮し
何らかの行動をすべき時に来ているのではないでしょうか。
 この決意と行動如何に
 私たちの未来がかかっていると言っても過言ではありません。

元旦に、当ホームページに公開した
拙文「迎春 ―2023年 新年のごあいさつ」を補強し
“軍国大増税の岐路に立つ日本
―腐り切ったわが国の政治―
と改題
あらためてここにPDFファイルを掲載します。

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新年のごあいさつ2023

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“迎春 ―2023年 新年のごあいさつ”
(PDF:527KB、A4用紙10枚分)

夜空と朝焼け

迎 春 ―2023年 新年のごあいさつ

打ち重なる
パンデミック、気候危機、ウクライナ戦争
苦難の峠を越え
前方に幽かに開ける未来への道筋。
 そんな明るい兆しの年であってほしいと
 願わずにはいられません。

昨年9月末から3ヵ月にわたり連載したシリーズ
“21世紀の未来社会 ―世界的複合危機、混迷の時代を生きる―(全13章)
これを機縁に
これからも引き続き
切磋琢磨の素晴らしい交流の場になるよう
みなさんとともに心がけていきたいと思います。
 今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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