新年のごあいさつ2023

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“迎春 ―2023年 新年のごあいさつ”
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夜空と朝焼け

迎 春 ―2023年 新年のごあいさつ

打ち重なる
パンデミック、気候危機、ウクライナ戦争
苦難の峠を越え
前方に幽かに開ける未来への道筋。
 そんな明るい兆しの年であってほしいと
 願わずにはいられません。

昨年9月末から3ヵ月にわたり連載したシリーズ
“21世紀の未来社会 ―世界的複合危機、混迷の時代を生きる―(全13章)
これを機縁に
これからも引き続き
切磋琢磨の素晴らしい交流の場になるよう
みなさんとともに心がけていきたいと思います。
 今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

ウクライナ戦争の底知れぬ泥沼化
雑多で一方的な情報の氾濫
 年の瀬も押し迫る12月23日
 現代アメリカ政治研究者、前嶋和弘氏のテレビ番組での発言
 「アメリカがウクライナを支援するウラには
  したたかな金のにおいがする」。

これを耳にしてとっさに脳裡に浮かんだのは
今は亡き国際政治学者、岡倉古志郎さんの
『死の商人』(岩波新書、1951年)であった。
 この古典的名著の出版から早や70年の歳月が過ぎた。
 帝国主義の本質とその性格は
 今も一向に変わるものではない。

それどころか
兵器産業の寄金に支えられた
アメリカの巨大シンクタンク“戦争研究所”が
一方的にタレ流す膨大な情報のもと
超大国は今もなお
悪辣巧妙、しかも大がかりな規模で
世界を撹乱、蹂躙し続けている。

 まさにウクライナ戦争は
 21世紀の今日の時代に相応しい姿形に変え甦った
 新帝国主義とも言うべき
 超大国および諸大国による
 覇権争奪の戦争そのものなのである。

内に目を向ければ
外国の政・教保守反動勢力との
根深い因縁と癒着
底知れぬ政治腐敗の闇
 金バッジ付きの背広を着込み
 ウソで凝り固まった政治家の群れ
 そんな時代はもううんざりです。

こんな政治家たちがついこの間まで
自ら犯してきた醜悪な罪業を
すっかり忘れたかのように
現に今、またもや策略を弄し
強行する自らの反国民的行為を
一向におかしいとは思わないのである。
何と傲慢なことであろうか。

 昨年暮れからいよいよ激しくなる
 一方的で欺瞞に満ち満ちた政治プロパガンダ
 国民の生活と生命を根底から破壊する
 悪辣きわまりない「軍拡大増税」「軍拡国債」の大合唱
 まさに戦争前夜の悪夢がよみがえってくる。

こうした政治家たちは
国民の大半を置き去りにしたまま
あくまでも私的な団体に過ぎない
自民党の税制調査会の幹部会合なるものを
散々喧伝に利用した揚げ句
 暮れも押し迫る昨年12月16日
 岸田首相は事もあろうに
 「安全保障関連3文書」なるものを
 そそくさと閣議決定したのである。

その驚くべき内容たるや
「敵基地攻撃」能力に巨費を投入
米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入
「無人アセット防衛能力」の構築
武器輸出制限の緩和、促進などなど
2023年度から5年間の軍事費総額43兆円。

 しかも日本国憲法第九条など素知らぬ顔で
 「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」に
 真っ向から違反しての決定であった。

あとは、この事態の奥に隠された本質には一切触れず
軍拡を当然の前提として
その財源捻出の細々とした手法に矮小化し
おざなりの議論をすれば済むという魂胆なのだ。
 これが彼らの言う
 わが国議会制民主主義の実態なのである。

法治国家として
こんなこと自体が許されるのであろうか。
今日のわが国政治が土台から腐っていく
最大かつ根元的原因は
まさに根本規範の蹂躙そのものにある。

 マスメディアもまた無批判に
 彼らと同じ枠内での報道に終始する
 これでは蚊帳の外に置かれた国民は
 たまったものではない。

原発政策もまた然り。
運転期間60年超への延長
建て替え・新増設などを骨子に閣議決定し
関連法案を年頭の通常国会に提出するという。

 3・11福島原発苛酷事故からわずか11年
 どさくさに紛れ矢継ぎ早に
 原発回帰へと突っ走る。

これまた暮れも押し迫る昨年12月23日
一般会計の歳出総額114兆3812億円となる
2023年度予算案がそそくさと閣議決定された。
その額たるや11年連続で過去最大となった。

 その主な要因は、岸田政権が進める
 敵基地攻撃能力など
 軍事力の抜本的強化の関連経費を盛り込んだ
 6兆8214億円にものぼる軍事費である。
 これは、前年比で1兆4214億円の増額となる。

これを一般歳出で見ると
公共事業費6兆600億円
文化科学振興費5兆4158億円を上回る額となる。
一部少子化対策などの財源は
年明けに先送りする始末である。

 一方、歳入面では
 税収が69兆4400億円で
 過去最高を見込んだ。
 楽観的で見通しがあまりにも甘すぎると
 強い批判の声が出たのも当然である。

いずれにせよ借金なしでは歳出は賄えず
新たな国債35兆6230億円を発行する。
このうち一部軍事装備品の関連経費に
建設国債費4343億円をあてる。

 政府はこれまで
 戦前に戦時国債で軍事費を際限なく拡大してきた教訓から
 「防衛費」には建設国債を認めてこなかった。
 これも将来に重大な禍根を残す大転換である。

岸田政権は、国民の生活を犠牲に
こうもしてまで戦争への道を突っ走るというのであろうか。

 それでも世の中は相も変わらず
 営利本位のコマーシャルの氾濫
 グルメ、ファッション、ワールドカップに沸き
 バーチャル空間でのあれやこれやに
 私的享楽と熱狂を求め
 ますます狭隘な世界に埋没していく。

メディアは飽きもせず延々と
豪華な絨毯舞台での自民党内派閥抗争を
国民にとってあたかも最重要事であるかのように
興味をそそる猿芝居に仕立て
面白おかしく延々と見せつける。

 そうこうしている裡に
 いつしか多くの国民は
 戦後日本の「安全保障政策」と
 原発政策の大転換が強行されたことすら
 すっかり忘れ
未来への展望を見失い
権力の思うがままに
戦争の道へと巻き込まれていく。

 私たちは今
 そんな恐るべき事態に直面している。

非同盟・中立、非武装・不戦の
世界に誇る日本国憲法の崇高な理念。

 今こそ、これまですがり付いてきた
 国際的暴力徒党集団に頼る
 恥ずべき安全幻想に訣別を告げ
東アジア地域世界の民衆に
分断と対立、破滅と滅亡をおびき寄せる
恐るべき悪魔、日米軍事同盟を潔く破棄し
 あらゆる軍事同盟に加担せず
 永世中立を遵守する。
 これが戦後私たちの信念であり、矜持であったはずだ。

覇権大国がけしかける
「マッチポンプ」式の
卑劣な常套手段に惑わされることなく
非同盟・中立を堅持し
国境を越えた民衆主体の友好協調に最大限努めつつ
 世界に先駆けて
 陸海空軍その他一切の戦力を放棄し
 身をもって
 際限のない軍拡競争に歯止めをかける。

憲法の理念を貫く「菜園家族」日本が
戦争のない
自然循環型共生の
いのち輝く
素朴で精神性豊かな
民衆の生活世界を築きあげていく。

 そんな先鞭の夢が叶えられる
 私たちの祖国日本でありたいと切に願うのです。

平然と憲法の精神を踏みにじり
民衆同士が殺し合う
凄惨な戦争の道へと突き進むのか
 それとも
 素朴で精神性豊かな
 民衆の生活世界を築きあげていくのか
私たちは今
この二つの道の重大な岐路に立たされている。

 まさに今、世上では
 権力者たち自らが無責任にも作り出した
 「国際情勢の変化」を口実に
野獣の本能に勝るとも劣らぬ衝動に駆られ
「武力に対しては武力を」と
如何にも威勢のいい声が幅を利かせている。

 軍事力増強の理由をあれこれ並べ立て
 「わが国の領土と国民の生命・財産を守り抜く」ためには
 敵基地攻撃も辞さないと
軍拡はもはや当然とばかりに
自作自演の戦争に国民を引き摺り込む
そんな無責任極まりない議論が罷り通っている。

 国会での議論はできるだけおざなりに済ませ
 国民との対話は極力避ける
そして、戦後日本の「安全保障政策」のこの大転換を
主権者たる国民を置き去りにしたまま強行する。
 ファシストまがいのこの作為に同調し
 世論形成に一役買ってきた
 マスメディアの責任は重大である。

自らは手を染めることなく
この急激な流れを高みから操り
タクトを振ってきたのが
 ほかでもない「聞く耳を持っている」などと吹聴し
 空虚な「新しい資本主義」を掲げ
 「核兵器のない世界へ」などと
 如何にも国民受けのいい「約束事」を並べ立て
 それすら次々に反故にする
 「被爆地広島選出」の現首相岸田文雄その人なのである。

果てには、旧統一教会がらみで
身内の党の極右勢力に押し詰められ
術を失い、いざ自己の政治生命が危うくなると
安倍前政権宿願のあの卑怯で恐るべき反動政策を
平然と次々に強行し
国民の暮らしなどには目もくれず
自己保全を図ろうとする。

 この豹変の一事からもはっきりしてきたことは
 首相就任以前から長きにわたる
 彼の一貫した優柔不断の真意が
 実は、単なる利己的な権力街道をひたすら駆け上がる
 深慮遠謀に過ぎなかったということだ。

戦後わが国歴代政権の政治哲学の不在
金権まみれの反理知的俗物の性(さが)
まざまざと見る思いがする。
 戦後長きにわたって擬装変身を繰り返しながら
 存続を図ってきた自民党政権
 その変身ぶりの手口を含め
 しかと注視していかなければならない。

21世紀20年代の今日においても
いまだ未解決の
民衆にとって切実かつ重大な根源的問題
それは
人間が人間を支配し抑圧する
虚偽と欺瞞に満ちた世界である。

 混迷と苦難きわまる時代にあって
 この現実の混沌と混濁の中から
 新たな未来を切り拓くに足る
 民衆自身の政治的力量
 それを育む
 民衆自身による“新たな未来社会論”の構築が待たれる。

人類は、そして人々は
18世紀イギリス産業革命以来、根なし草同然となった
人間の生存形態「賃金労働者」からの脱却をめざし
近代を超克する、抗市場免疫の
「菜園家族」へと自己変革を遂げていく。

 日本列島を縦断する脊梁山脈を分水嶺に
 太平洋と日本海に水を分けて走る
 大小さまざまの水系に沿って
 古来より息づいてきた
 全国津々浦々の森と海を結ぶ流域地域圏。

今や衰退しきった
このかけがえのない流域地域圏を母胎に
再び自らの暮らしの足元から
ささやかだが潤いのある
新たな高次のライフスタイルの創造に立ち向かう。

 この苦難の道の葛藤の中から
 人間にとっての真実と
 生きる喜びを
 きっと見出すであろう。

今あらためて
シリーズ“21世紀の未来社会”(全13章)を読み返し
とりわけ当面する「戦争と平和」の問題については
第十一章「『菜園家族的平和主義』の構築
―いのちの思想を現実の世界へ―
https://www.satoken-nomad.com/archives/1981
をめぐって
引き続き議論を深めていきたいと願っている。

 「ウクライナ戦争を見よ」
 「ロシアが先に侵略したのだ」
 「平和を守るために」
 「民主主義のために」
 「北朝鮮を見よ」
 「台湾有事にどうする」
 「中国の脅威に備えよ」
 「力による現状変更を許さない」
 「祖国防衛のために」などなど
権力的為政者のこんな見え透いた言辞に
惑わされている場合ではない。

 たとえ如何なる理由があろうとも
 結局、戦争は
 国権の名において
 民衆に強制する
 民衆同士の殺し合いなのだ。

とどのつまり
「敵」「味方」の区別なく
すべての民衆が等しく
いつ終わるとも知れぬ
凄惨な泥沼の地獄に嵌まっていく。

 戦争とは、国権の発動による
 大掛かりな人間虐殺、人間性の徹底的破壊たる
 国家の凶悪な知能的犯罪そのものである。
 これが歴史の偽らぬ真実だ。

戦争は終わる
そして戦争はなくなる
みんなが心底本気で望めば。

 末尾になりましたが、
 ご家族みなさまのご健康とお幸せを
 何よりも祈っています。

2023年 元旦
琵琶湖畔鈴鹿山中、里山研究庵Nomad
小貫雅男・伊藤恵子

       ――― ◇ ◇ ―――

シリーズ“21世紀の未来社会 ―世界的複合危機、混迷の時代を生きる―(全13章)の≪目次一覧≫は、下記リンクのページをご覧ください。
https://www.satoken-nomad.com/archives/1823

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