新著『菜園家族の思想 ―甦る小国主義日本―』(かもがわ出版)が刊行されました!

 このたび新著『菜園家族の思想 ―甦る小国主義日本―』(小貫雅男・伊藤恵子 著、かもがわ出版、四六判384頁、2016年10月)が刊行されました。ぜひご一読ください。

表紙『菜園家族の思想―甦る小国主義日本―』(小貫雅男・伊藤恵子、かもがわ出版、2016年)

(帯付き)

 

 

 

 

『菜園家族の思想 ―甦る小国主義日本―
(小貫雅男・伊藤恵子 著、かもがわ出版
四六判384頁、2016年10月31日発行、
定価:本体2,500円+税)

 

 

飽くなき欲望の巨大怪物、グローバル市場に対峙し
今こそ、近代超克の大地への回帰と止揚を

抗市場免疫の「菜園家族」型ワークシェアリングによる
もともとあったはずの自由な時間の回復と
素朴で、精神性豊かなライフスタイルの創造。

憎しみと暴力の連鎖に代えて、寛容と共生の思想を暮らしの根っこから。

                       ~帯(表)のキャッチフレーズより~

「菜園家族」の未来構想の根底には、
人々の心に脈々と受け継がれてきた
大地への回帰と止揚という
民衆の揺るぎない歴史思想の水脈が息づいている。

まさにこの民衆思想が
21世紀未来社会論の新たな局面を切り拓く。

               ~帯(裏)のキャッチフレーズより~

 「菜園家族」の真髄は、燦々と降りそそぐ太陽のもと大地を耕し、雨の恵みを受けて作物を育て、その成長を慈しむことにある。天体の運行にあわせ、自然のゆったりとした循環の中に身をゆだね、子供たちも、大人たちも、年老いた祖父母たちも、ともに助け合い、分かち合い、仲良く笑顔で暮らす。それ以外の何ものでもない。
 人と競い、争い、果てには他国への憎しみを駆り立てられ、殺し合う。そんな戦争とは、「菜園家族」はもともと無縁である。残酷非道な、それこそ無駄と浪費の最たる前世紀の遺物「人を殺す道具」とは、無縁なのである。「菜園家族」は、世界に先駆けて自らの手で戦争を永遠に放棄し、自らも大いなる自然に溶け込むように、平和に暮らすよすがを築いていくにちがいない。
                           ~「むすびにかえて」より抜粋~

資本主義固有の不確実性と投機性が露わになった今
大地から引き離され、根なし草同然となった近代の人間の生存形態
賃金労働者を根源的に問い直す。
 強欲、冷酷無惨なグローバル市場に対峙し
 近代を超克する抗市場免疫の新たな「菜園家族」を基礎に
 素朴で、精神性豊かな自然(じねん)世界への壮大な回帰と止揚の道を切り拓く。

21世紀、この基本方向をどう実現していくのか。
本書はその具体的な道筋と手立てを提示する。

                        ~カバー折返しの要旨紹介より~

帯なし表紙『菜園家族の思想―甦る小国主義日本―』(小貫雅男・伊藤恵子、かもがわ出版、2016年)

(帯をはずすと)

 

 

 

 

『菜園家族の思想 ―甦る小国主義日本―
(小貫雅男・伊藤恵子 著、かもがわ出版
四六判384頁、2016年10月31日発行、
定価:本体2,500円+税)

 

― 目 次 ―

はしがき  (1)

序章 憎しみと暴力のるつぼと化した世界、そこから立ち上がる新たな理念  (25)

1 世界の構造的不条理への反旗 (25)
― 今問われているのは私たちのライフスタイルそのもの ―
資本主義が陥った末期的症状
あらためてアルジェリア人質事件を思い起こす

2 東日本大震災から希望の明日へ  (29)
あのときの衝撃を一時の「自粛」に終わらせてはならない
「原発安全神話」の上に築かれた危うい国
財界の意を汲む復興構想の末路
21世紀未来像の欠如と地域再生の混迷 ― 上からの「政策」を許す土壌
新たな21世紀の未来社会論を求めて

第一章 21世紀未来構想の問題意識、求められるその方法論の革新  (45)

1 末期重症の資本主義と機能不全に陥った近代経済学  (46)
― 21世紀未来社会論のさらなる深化のために ―
近代を超えて遥かな地平へ
新古典派から抜け出たケインズ理論
経済の金融化と新自由主義、マネタリズムの登場
暴走するマネー経済と疲弊する現実社会
近代経済学を超えて、草の根の21世紀未来社会論を

2 19世紀未来社会論の到達点と限界  (59)
人類の歴史を貫く民衆の根源的思想
19世紀に到達したマルクスの未来社会論
19世紀未来社会論に代わる私たち自身の21世紀未来社会論を

3 21世紀未来社会論、その方法論の革新  (68)
21世紀の今日にふさわしい新たな歴史観の探究を
未来社会論の基底に革新的地域研究としての「地域生態学」を据える
― 21世紀社会構想の変革のために

第二章 私たちは何とも不思議な時代の不思議の国に生きている  (75)
― いのち削り、心病む終わりなき市場競争 ―

1 今なぜ近代の人間の社会的生存形態「賃金労働者」を問い直すのか  (77)

2 生命本位史観に立脚し「家族」と「地域」の再生を探る  (83)
いのちの再生産とモノの再生産の「二つの輪」が重なる家族が消えた
高度経済成長以前のわが国の暮らし ― かつての森と海を結ぶ流域地域圏
森から平野へ移行する暮らしの場
歪められ修復不能に陥ったこの国のかたち
「家族」と「地域」衰退のメカニズム ― 干からびた細胞
再生への鍵 ―「家族」と「地域」を基軸に

第三章 人間はなるべくして人間になった ― その奇跡の歴史の根源に迫る ―  (93)

人間とは、「家族」とは一体何か
「家族」の評価をめぐる歴史的事情
人間の個体発生の過程に生物進化の壮大なドラマが
母胎の中につくられた絶妙な「自然」
人間に特有な「家族」誕生の契機
「家族」がもつ根源的な意義
人間が人間であるために

第四章 「菜園家族」構想とその基礎  (111)
― 21世紀の「地域生態学」的未来社会論 ―

生産手段の分離から「再結合」の道へ ―「自然への回帰と止揚」の歴史思想
「菜園家族」構想の理念とその歴史的意義
週休(2+α)日制のワークシェアリングによる三世代「菜園家族」構想
世界に類例を見ないCFP複合社会 ― 史上はじめての試み
CFP複合社会の特質
甦るものづくりの心、ものづくりの技
土が育むもの ― 素朴で強靱にして繊細な心
家族小経営の歴史性と生命力

第五章 「菜園家族」構想の現実世界への具体的適用とその展開  (143)
― 実現可能性を探る ―

日本の農村・農業の現実 ― 反転、そして再生へ
“菜園家族群落”による日本型農業の再生 ― 高度な労農連携への道
農地とワークの一体的シェアリング ― 公的「農地バンク」、その果たす役割
草の根民主主義熟成の土壌 ― 森と海を結ぶ流域地域圏の再生

第六章 「匠商家族」と地方中核都市の形成  (165)

非農業基盤の家族小経営 ―「匠商家族」
「匠商家族」とその協同組織「なりわいとも」
「なりわいとも」と森と海を結ぶ流域地域圏の中核都市
「なりわいとも」の歴史的意義
前近代の基盤の上に築く新たな「協同の思想」

第七章 高度経済成長の延長線上に現れた3・11の惨禍  (183)

高度経済成長が地域にもたらしたもの
今日の歪められた国土構造を誘引し決定づけた『日本列島改造論』
『日本列島改造論』の地球版再現は許されない
今こそ「成長神話」の呪縛からの脱却を

第八章 「菜園家族」の台頭と資本の自然遡行的分散過程  (201)

資本の自己増殖運動と科学技術
資本の従属的地位に転落した科学技術、それがもたらしたもの
GDPの内実を問う ― 経済成長至上主義への疑問
資本の自然遡行的分散過程と「菜園家族」の創出
新たな科学技術体系の生成・進化と未来社会

第九章 自然循環型共生社会への現実的アプローチ  (217)
― 四つの具体的提案を基軸に考える ―

21世紀こそ草の根の変革主体の構築を ―「お任せ民主主義」の限界と破綻

その1 原発のない低炭素社会への道、その究極のメカニズム  (220)
「菜園家族」の創出は、地球温暖化を食い止める究極の鍵
原発のない低炭素社会へ導く究極のメカニズム ― CSSK方式
CFP複合社会への移行を促すCSSKメカニズム
CSSK特定財源による人間本位の新たなる公共的事業
本物の自然循環型共生社会をめざして

その2 今こそ地域社会の本格的な実態把握を ― 新たなる未来の明日のために  (230)
アベノミクスの「地方創生」は積年の悪弊の延長にすぎない
一つの具体的「地域」典型から、今何をなすべきかを考える
市町村における地域再生の本当の鍵は、農業・農村問題の解決である
地域社会には、今こそ精密検査による根本的な原因療法がもとめられている
本物の民主主義の復権と地域の再生

その3 「菜園家族」じねんネットワーク(SJnet)の構築、その多彩で豊かな展開  (241)
自然(じねん)の原理によって生まれ育つSJnet
SJnetの活動とその原理 ― 自主、自発の原則
労働組合運動の驚くべき衰退、そこから見えてくるもの
21世紀の労働運動と私たち自身のライフスタイル ―「菜園家族」の新しい風を
多彩で自由な人間の活動 ― 底から支える力

その4 「菜園家族」じねんシンクタンク(SJTT)創設の意義  (250)
SJnetを土台に築く草の根のシンクタンク
草の根の叡知の結集こそが新たな時代を切り拓く

第十章 「菜園家族」を土台に築く円熟した先進福祉大国  (253)
― 近代を超克する社会保障制度を探る ―

原理レベルから考える「自助、共助、公助」
「家族」に固有の機能の喪失とこの国破綻の根源的原因
スモール・イズ・ビューティフル ― 巨大化の道に抗して
「家族」に固有の福祉機能の復活と高次社会保障制度
「菜園家族」を土台に築く円熟した先進福祉大国への可能性
近代を超克する円熟した先進福祉大国をめざす新たな国民運動の形成
「家族」と「地域」の再生は不可能なのか
「家族」と「地域」の再生をゆるやかな変化の中で捉える ― 諦念から希望へ
「お任せ民主主義」を排し、何よりもまず自らの主体性の確立を
― そこにこそ生きる喜びがある

第十一章 近代を超克する「菜園家族」的平和主義の構築  (281)
― いのちの思想を現実の世界へ ―

日本国憲法の平和主義、その具現化の確かな道を求めて
アベノミクス主導の解釈改憲強行の歴史的暴挙
あらためて日本国憲法を素直に読みたい
アベノミクス「積極的平和主義」の内実たるや
「自衛」の名の下に戦った沖縄戦の結末は
「巨大国家の暴力」と「弱者の暴力」との連鎖をどう断ち切るか
憲法第九条の精神を生かす新たな提案 ― 自衛隊の「防災隊」(仮称)への発展的解消
非戦・平和構築の千里の道も一歩から
非戦・平和の運動に大地に根ざした新しい風を
戦後70年、もう一度初心にかえり世界の人々に呼びかけよう

第十二章 今こそ近代のパラダイムを転換する  (301)
― 生命本位史観に立脚した21世紀未来社会論 ―

未踏の思考領域に活路を探る
人間の新たな社会的生存形態が、21世紀社会のかたちを決める
自然界を貫く「適応・調整」の普遍的原理
自然法則の現れとしての生命
自然界の普遍的原理と21世紀未来社会
CFP複合社会を経て高次自然社会へ ― 労働を芸術に高める
未来社会を身近に引き寄せる「セクターC、F、Pの対立と依存の展開過程」
形骸化した民主主義の現状と「生産手段の再結合」
より高次のFP複合社会における生産手段の所有形態をめぐって
ここで確認しておきたいいくつかの要諦

むすびにかえて ― 自然(じねん)の思想を現実の世界へ ―  (331)

人間社会の生成・進化を律する原理を自然界の「適応・調整」の普遍的原理に戻す
自然への回帰と止揚、これこそが人間の本源的な歴史思想である
自然観と社会観の分離を排し、両者合一の思想をすべての基礎におく
混迷の時代だからこそ見失ってはならない未来社会への展望、そしてゆるぎない確信
日本国憲法のもとではじめて甦る「未発の可能性」としての小国主義

あとがき ―「世界でいちばん貧しい大統領」ホセ・ムヒカさんの思想との交歓 ― (347)

引用・参考文献一覧 (362)

著者からのメッセージ
 東日本大震災の未曾有の事態に直面し、歴史の大きな転換期にあるにもかかわらず、旧態依然たる上から目線の政策が次々と押しつけられ、後退に後退を余儀なくされているのが現状です。「地域」や「労働」の現場に生きる人々の立場に立った、かつ21世紀日本のめざすべき方向を見据えた包括的な研究と実践、それに基づく未来構想とそこに至る具体的な道筋の探究が、今ほどもとめられている時もありません。
 一方、世界に目を転ずるならば、米ソ二大対立の終焉は多元的覇権抗争の「新大国主義時代」とも言うべき新たな局面を招来し、グローバル市場化はさらなる熾烈を極めています。各地の民衆の生活基盤は揺らぎ、人々の不満と怒りの鬱積は頂点に達し、憎悪と暴力の連鎖はとどまることを知りません。今や世界は、自己制御不能の危機的状況にすら陥っていると言えるでしょう。
 私たちはどのような未来をめざすべきなのか、人類史の長いスパンの中で18世紀イギリス産業革命以来の近代を、自然と人間、人間と人間との関係からあらためて深く問い直す時に来ているのではないでしょうか。
 戦後70年、重大な岐路に立たされている今こそ、どこかで誰かによっていつの間にか自らの運命が決められてしまう「お任せ民主主義」を克服し、自らの頭で自らのすすむべき道を選び、主体的に考え行動する、そんな主権在民のあるべき姿を取り戻したい・・・。
 こうした思いから、本書をまとめました。
 憎しみと対立の連鎖が拡大の一途を辿る今日の世界にあって、この小著が近代を超克する新たな視点から、寛容と共生の21世紀社会の枠組みを探るささやかな一助になればと願っています。

2016年10月
里山研究庵Nomad
小貫雅男・伊藤恵子

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