連載「気候変動とパンデミックの時代を生きる」≪その4≫

 2021年11月26日に、菜園家族じねんネットワーク日本列島Facebookページhttps://www.facebook.com/saienkazoku.jinen.network/に掲載した、連載「気候変動とパンデミックの時代を生きる」≪その4≫を、以下に転載します。

 なお、新プロジェクト“菜園家族じねんネットワーク日本列島”の趣意書(全文)― 投稿要領などを含む ― は、こちらをご覧ください。

【連載】気候変動とパンデミックの時代を生きる ≪その4≫
 ―避けられない社会システムの転換―

――CO2排出量削減の営為が即、古い社会(資本主義)自体の胎内で次代の新しい芽(「菜園家族」)の創出・育成へと自動的に連動する社会メカニズムの提起――

◆ こちらから全文をダウンロードできます。
気候変動とパンデミックの時代を生きる≪その4≫
(PDF:270KB、A4用紙2枚分)

山並みと木々

◆「菜園家族」の創出は、地球温暖化を食い止める究極の鍵◆

 「菜園家族」未来社会構想では、経済成長と地球環境保全とのジレンマに陥っている今日の「温暖化対策」の限界を克服すべく、それとは異なる新たな次元からその解決に迫まろうと、既にこれまでにも具体的な提案をおこなってきました。

 つまりそれは、連載の冒頭で、毎回、繰り返し掲げているように、CO2排出量削減の営為が、ただ単にその削減だけにとどまることなく、同時に即、古い社会(資本主義)自体の胎内で、次代のあるべき社会の新しい芽(「菜園家族」)の創出・育成へと自動的に連動するような、新たな社会的メカニズムCSSK創設の提起です。

 資本主義社会においては、商品開発の資金力、技術力、それにメディアを利用する力は巨大企業に独占されています。
 最先端の科学的知見と技術の粋を動員して、新奇な商品の開発に邁進したり、些細なモデルチェンジをひたすら繰り返し、使いこなせないほどの多機能化をはかったりする。テレビのコマーシャルや新聞・雑誌・インターネットなどの広告によって、人間の好奇心や欲望を商業主義的に絶えず煽り、強引に需要をつくり出していく。・・・

 企業の莫大な資金力によって築き上げられた情報・宣伝の巨大な網の目の中で、人々は知らず知らずのうちに、浪費があたかも美徳であるかのように刷り込まれ、大量生産、大量浪費、大量廃棄型のライフスタイルはいよいよ助長されていきます。
 人間は自然から隔離された狭隘な、人工的でバーチャルな世界にますます幽閉され、野性を失い、病的とも言える異常な発達を遂げていきます。それが快適な生活で幸福な暮らしだと思い込まされているのです。

 欲望を煽られても買わなければいい、と言われるかもしれません。ある面ではそうかもしれません。しかし、消費者は同時に企業の労働者であり、企業が窮地に陥れば、企業の労働者である消費者も同じ運命にあるという「悪因縁の連鎖」の中にあることも事実です。
 この市場原理至上主義「拡大経済」社会のほとんどすべての人々は、この「悪因縁の連鎖」につながっているのです。しかも、消費も生産もともに絶え間なく拡大させ、その需給のコマを絶えず円滑に回転させなければ不況に陥るという宿命にあります。こうした社会にあっては、浪費は美徳として社会的にも定着していかざるをえません。

 しかし今や世界は、地球環境の破壊、気候変動のもたらす破局的危機に直面し、「経済成長」神話の虜(とりこ)になっていさえすればそれで済まされる時代は、もうとうに終わりを告げています。

 こうした新たな時代を迎えたなかで、2000年以来提起してきた「菜園家族」社会構想では、18世紀イギリス産業革命以来、今日まで長きにわたって延々と続いてきた近代特有の人間の社会的生存形態、つまり、大地から引き離され根なし草同然となった、不安定極まりない賃金労働者そのものを根源的に問い直すことからはじめています。

 それは、歴史を遡ることによって、現代賃金労働者(サラリーマン)と生産手段(自給に必要な最小限の農地と生産用具、家屋など)との「再結合」という、これまで軽視され、閉ざされてきた未踏の理論領域にあえて踏み込み、今日の時代に見合った高次の新たな人間の社会的生存形態(「菜園家族」)を創出し、これを手がかりに、新しい21世紀未来社会論を構築しようという試みでもあるのです。

 「菜園家族」社会構想の骨子と、それに基づくCSSKメカニズムの内容については、次回の連載≪その5≫以降で順次、具体的に述べていくことにしますが、それに先立ち、忘れてはならない重要なことをおさえておきたいと思います。

 それは、大地に根ざした自給自足度の高い、それ故に市場原理に抗する免疫力に優れた「菜園家族」の創出そのものが、実は、社会のエネルギー消費総量の大幅削減を可能にし、地球温暖化を食い止め、気候変動による地球環境の破局的危機を回避する決定的な鍵になるということです。
 それと同時に「菜園家族」の創出それ自体が、資本主義の胎内に、それに代わる次代の新しい社会システムの芽を育むことにもなるということです。

 やがてそれが成熟していく時、今日の市場原理至上主義の生産体系とそのライフスタイル、つまり資本主義そのものを根底から変革し、人類の悲願である、大地に根ざした素朴で精神性豊かな自然循環型共生社会(じねん社会)を生み出す確かな原動力になることに刮目していただきたいと思います。

「差迫る気候変動の脅威、避けられない社会システムの転換」(小貫雅男・伊藤恵子、『季論21』第48号、本の泉社、2020年4月)をベースに再構成。

≪その5≫につづく

(2021.11.26 里山研究庵Nomad 小貫・伊藤)