月別アーカイブ: 2024年2月

連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第5章(その2)

新企画連載
希望の明日へ
―個別具体の中のリアルな真実―

第5章 “菜園家族 山の学校” その未来への夢(その2)

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」
第5章 “菜園家族 山の学校” その未来への夢(その2)
(PDF:461KB、A4用紙7枚分)

4 諦念に沈む限界集落

 しかし、現実は、そう生易しいものではありません。
 “菜園家族 山の学校”の拠点となる大君ヶ畑(おじがはた)は、四十数戸(2008年)からなる、近世江戸時代の“村”を継承する伝統ある古い集落です。
 原初的な山岳信仰から生まれ、風雲を支配するという八大竜王が祀(まつ)られている白山神社と、浄土真宗の妙玄寺、宗願寺という2つのお寺があり、村の人びとは、四季折々の伝統行事を行ってきました。

写真5-4 白山神社「三季の講」秋の例祭(2001年9月)
白山神社の「三季の講」の秋の例祭(2001年9月)
「三季の講」を支える若衆集団は、村落構造の中心的役割を担ってきた。少なくとも近世以来続いてきたこの例祭も、若者の急速な減少によって、2005年秋を最後にその正式な形態は途絶えた。

 ところが、過疎・高齢化が急速にすすみ、白山神社の行事である「三季の講」や、御池岳への雨乞い踊り「かんこ踊り」すら、主役となるべき青年や子どもたちがいなくなり、継続が困難になっています。
 この集落を含む広大な鈴鹿山脈の森林地帯と、犬上川上流域の清流に恵まれた渓谷一帯をいかに再生させていくかは、地域の人びとにとって喫緊の課題ですが、現状ではあまりにも気の遠くなる難題であるといわざるをえません。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第5章(その1)

新企画連載
希望の明日へ
―個別具体の中のリアルな真実―

第5章 “菜園家族 山の学校” その未来への夢(その1)

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第5章 “菜園家族 山の学校” その未来への夢(その1)
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写真5-3 おじがはた保育園
おじがはた保育園
中央が保育園舎、右端が体育館。校庭はこの奥に広がる。手前を流れるのは犬上川北流

1 “めだかの学校” を取り戻す

  めだかの学校

 作詞/茶木 滋  作曲/中田喜直

めだかの学校は 川のなか
そっとのぞいて みてごらん
そっとのぞいて みてごらん
みんなでおゆうぎ しているよ

めだかの学校の めだかたち
だれが生徒か 先生か
だれが生徒か 先生か
みんなでげんきに あそんでる

めだかの学校は うれしそう
水にながれて つーいつい
水にながれて つーいつい
みんながそろって つーいつい

(1951年、NHKラジオ「幼児の時間」で放送)

“めだかの学校”は、作詞者の茶木滋が、終戦直後の春、疎開先の小田原で幼い息子と買い出しの途中、荻窪用水のほとりで見た情景と、2人で交わした会話をもとに、うたったものといわれています。

 21世紀、混迷のなかから、私たちが、そして世界が探し求めているものは、エコロジーの深い思想に根ざした本物の自然循環型共生社会への確かな糸口です。その意味でも、“菜園家族 山の学校”は、一地方のささやかな試みではあっても、その夢は大きいといわなければなりません。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第4章(その2)

新企画連載
希望の明日へ
―個別具体の中のリアルな真実―

「お任せ民主主義」は諸悪の根源である

政治資金パーティー裏金問題に端を発し
政治権力の底知れぬ構造的腐敗
権力のまさしく本質が
ようやく国民の目にさらけ出されつつある。

 政治家は欺瞞に充ち満ちた
 「選挙」という実に卑小な枠組みに
 すっかり取り付かれ
 私利私欲に走り、保身をはかる
 ついには、骨の髄まで腐り切っていく。

それを許してきた温床は
まさしく戦後長きにわたって
「お任せ民主主義」に安住し
主体性を失い
ますます内向きになっていく
国民の脆弱な意識そのものではなかったのか。

 今、この恐るべき現実を突き付けられ
 こんな筈ではなかったと
 やっと気づきはじめたのかもしれない。

だが、驚くべきことに
当の政治家自身が
そもそも道義的にも失ったはずの「議席」に居座り
平然と権力を温存し、勝手気ままに
生き残ろうと画策している始末なのだ。

 この現実はあまりにも根深い
 だから、今度こそは騙されてはならない。

結局それは、心の奥底から掘り起こす
私たち自身のまさに意識の大転換でなければならないのだ。

 生命系の未来社会論具現化の道としての
 「菜園家族」社会構想の根底には
 人びとの心に脈々と受け継がれてきた
 大地への回帰と止揚(レボリューション)という
 民衆の揺るぎない歴史思想の水脈が
 深く静かに息づいている。

まさにこの民衆思想が
冷酷無惨なグローバル市場に対峙し
大地に根ざした
素朴で精神性豊かな生活世界への
新たな局面を切り拓くであろう。

 世界は変わる
 人が大地に生きる限り。

第4章  地域再生に果たす国と地方自治体の役割(その2)

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第4章 地域再生に果たす国と地方自治体の役割(その2)
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青色の線・水色の三角パネルの幾何学模様

3 新しい地域金融システムと交通システムの確立

 森と海(湖)を結ぶ流域地域圏(エリア)が相対的に自立度の高い経済圏として成立するためには、どのような前提が必要になるかを、もう少し考えてみましょう。
 長期的展望に立った流域地域圏(エリア)の基本構想を立案し、それを計画的に実行していくためには、後述する森と海(湖)を結ぶ流域地域圏(エリア)自治体(郡)ともいうべき体制を整える必要があります。
 そして、今日の税制のあり方を抜本的に改革した地方自治体の財政自治権を確立することが不可欠の課題です。

 その上で、国および都道府県レベルに創設される公的機関「CO削減(C)と菜園家族(S)創出の促進(S)機構(K)」(略称CSSK)との連携を強化しつつ、流域地域圏(エリア)自治体(郡)が自らの判断で、「菜園家族インフラ」への的確な公共投資を計画的に行えるような、地域政策投資のシステムを確立しなければなりません。

 また、相対的に自立度の高い経済圏が成立するためには、流域地域圏(エリア)内でのモノやカネやヒトの流通・交流の循環の持続的な成立が大切です。そのためには、流域地域圏(エリア)内での生産と消費の自給自足度、つまり「地産地消」の水準が、可能な限り高められなければなりません。

 そして、地域融資・地域投資の新しい形態として、土地とか建物を担保にしてお金を貸す従来型のバンクではなく、事業性や地域への貢献度から判断してお金を貸す、本当の意味でのコミュニティ・バンクの創設が肝心です。
 そして、地域通貨を導入するなど、自律的な小経済圏を支える独自の経済システムを整えていく必要があります。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第4章(その1)

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希望の明日へ
―個別具体の中のリアルな真実―

「お任せ民主主義」は諸悪の根源である

政治資金パーティーに端を発し
政治権力の底知れぬ構造的腐敗
権力のまさしく本質が
ようやく国民の目にさらけ出されつつある。

 政治家は欺瞞に充ち満ちた
 「選挙」という実に卑小な枠組みに
 すっかり取り付かれ
 私利私欲に走り、保身をはかる
 ついには、骨の髄まで腐り切っていく。

それを許してきた温床は
まさしく戦後長きにわたって
「お任せ民主主義」に安住し
主体性を失い
ますます内向きになっていく
国民の脆弱な意識そのものではなかったのか。

 今、この恐るべき現実を突き付けられ
 こんな筈ではなかったと
 やっと気づきはじめたのかもしれない。

だが、驚くべきことに
当の政治家自身が
そもそも道義的にも失ったはずの「議席」に居座り
平然と権力を温存し、勝手気ままに
生き残ろうと画策している始末なのだ。

 この現実はあまりにも根深い
 だから、今度こそは騙されてはならない。

結局それは、心の奥底から掘り起こす
私たち自身のまさに意識の大転換でなければならないのだ。

 生命系の未来社会論具現化の道としての
 「菜園家族」社会構想の根底には
 人びとの心に脈々と受け継がれてきた
 大地への回帰と止揚(レボリューション)という
 民衆の揺るぎない歴史思想の水脈が
 深く静かに息づいている。

まさにこの民衆思想が
冷酷無惨なグローバル市場に対峙し
大地に根ざした
素朴で精神性豊かな生活世界への
新たな局面を切り拓くであろう。

 世界は変わる
 人が大地に生きる限り。

第4章  地域再生に果たす国と地方自治体の役割(その1)

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第4章 地域再生に果たす国と地方自治体の役割(その1)
(PDF:427KB、A4用紙7枚分)

三角のパターン

 市場原理が徹底して貫徹している一国の経済体制のただ中に、「菜園家族」を創出し、それを基軸に、いわば異質とも言うべき、相対的に自立度の高い自然循環型共生の経済圏を構築するということは、言うまでもなく容易ではありません。したがって、国と地方自治体は、その生成・構築のための環境づくりに格別に大きな役割を果たさなければならないことになります。

 国と地方自治体の施策については、第2章4節で提起したCSSKメカニズムを有効に活用していくことが大切です。
 この章では、鈴鹿山脈と琵琶湖を結ぶ犬上川・芹川流域地域圏(エリア)(彦根市、犬上郡多賀町・甲良町・豊郷町の一市三町)を想定し、国や地方自治体の果たすべき具体的な役割と、「菜園家族」時代の地方自治のあるべき姿について、現段階で考えうる重要な点を述べていきたいと思います。

1 公的「農地バンク」の設立 ―農地と勤め口(ワーク)の一体的シェアリング

 「菜園家族」構想を実現していく最初の段階で、まず、国や地方自治体が直面する重要課題は、「菜園」、つまり農地の確保と、週休(2+α)日制のワークシェアリング(但し1≦α≦4)の確立です。両者を相互に関連させて、もう少し掘り下げて考えてみましょう。

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