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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第3章2節(その1)

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希望の明日へ
―個別具体の中のリアルな真実―

第3章  グローバル経済の対抗軸としての地域
―森と海(湖)を結ぶ流域地域圏(エリア)再生への道―

琵琶湖畔・彦根
琵琶湖畔の彦根市街地 ~はるか遠方に伊吹山を望む

2 「森の菜園家族」による森林地帯の再生(その1)

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」
第3章 グローバル経済の対抗軸としての地域
2 「森の菜園家族」による森林地帯の再生(その1)
(PDF:599KB、A4用紙14枚分)

荒廃する山の集落と衰退の原因
 彦根市と犬上郡多賀町・甲良町・豊郷町の一市三町からなる犬上川・芹川流域地域圏(エリア)
 この東の周縁には鈴鹿山脈が走り、北から南へ霊仙山(りょうぜんやま)、三国岳、鈴ヶ岳、御池岳(おいけだけ)と標高1,000メートル級の山々が連なっています。
 森林地帯は流域地域圏(エリア)総面積の56%を占め、この森林地帯の81%が多賀町で、18%が彦根市の北東部です。したがって、森林総面積の実に99%が地域圏(エリア)の東縁に集中していることになります。とくに多賀町は、町の総面積の85.5%が森林で、「森の町」の名にふさわしい自然条件にあります。

図3-5 多賀町の地勢と集落
図3-5 多賀町の地勢と集落

 この広大な森林地帯は自然の降水を受けとめ、涵養し、山あいを走る渓流は川となって西へ流れ、平野を潤し、人びとの暮らしを支えてきました。この森林地帯は、犬上川・芹川流域地域圏(エリア)に生活する13万人のまさに“いのち”の源なのです。

 ところが、この森林山間地帯は、今では惨憺たる有り様です。広大な山間に散在する集落では、空き農家が続出し、多くの集落が廃村ないしは限界集落の状態にまで追い詰められています。高齢化によって、林業や農業の担い手は完全に失われ、山は荒れ放題です。
 滋賀県の行政サイドからは、「環境こだわり県」のかけ声が聞こえて、久しくなります。新しい県政をむかえた今こそ、環境パフォーマンスの段階は卒業して、「環境問題」を地域の暮らしの根っこから捉え直し、真剣に考える時機に来ているのではないでしょうか。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第3章1節

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第3章  グローバル経済の対抗軸としての地域
―森と海(湖)を結ぶ流域地域圏(エリア)再生への道―

琵琶湖畔・彦根
琵琶湖畔の彦根市街地 ~はるか遠方に伊吹山を望む

 グローバル経済が席捲する今こそ、これに対抗する包括的な地域研究の確立と地域実践が求められています。「菜園家族」を育むゆりかごとなる、森と海(湖)を結ぶ流域地域圏(エリア)。衰退のどん底から、反転、再生を考えるとき、「菜園家族」構想の基本理念に沿って、どのような地域の未来が描けるでしょうか。

 本章ではその再生への道を探るべく、1つの典型的な地域モデルとして、滋賀県の犬上川・芹川流域地域圏(エリア)(彦根市、犬上郡多賀町・甲良町・豊郷町の一市三町)を取り上げ、考えていきましょう。
 森と湖(うみ)を結ぶこの流域地域圏(エリア)は琵琶湖の東側に位置し、湖畔から湖東平野を経て鈴鹿山脈の広大な森林地帯までがその地理的範囲です(図3-1)。東西28km、南北19km、面積は256㎢あります。
 ここでは、この流域地域圏(エリア)を、とくに土地利用の視点から自然・社会・経済・文化・歴史の諸条件を考慮して、田園地帯、森林地帯、市街地と大きく3つに区分。それぞれのおかれている現状を直視するとともに、その地域再生の基本方向を考えていくことにします。

図3-1 犬上川・芹川流域の一市三町(彦根市、犬上郡多賀町・甲良町・豊郷町)の地勢とおもな集落
図3-1 犬上川・芹川流域の一市三町(彦根市、犬上郡多賀町・甲良町・豊郷町)の地勢とおもな集落

1 中規模専業農家と「菜園家族」による田園地帯の再生

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第3章 グローバル経済の対抗軸としての地域
1 中規模専業農家と「菜園家族」による田園地帯の再生
(PDF:447KB、A4用紙7枚分)

農業規模拡大化路線の限界
 犬上川・芹川流域地域圏(エリア)の主たる田園地帯としては、まず、彦根市の犬上川以南に広がる広大な平野部が挙げられます。加えて、甲良町の総面積の87%、豊郷町の総面積のほぼ全域が、主要な田園地帯に含まれます。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」≪小括≫

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≪小括≫ ―北国の春、中間的まとめとして―

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≪小括≫ ―北国の春、中間的まとめとして―
(PDF:461KB、A4用紙7枚分)

舞い落ちる雪

≪小括≫ ―北国の春、中間的まとめとして―

CFP複合社会の措定と高次自然社会への道
 これまでの考察から、少なくとも2つの大切なことが明らかになってきました。
 1つは、19世紀以来、資本主義超克の道として模索され世界的規模で展開されてきた、生産手段の社会的規模での共同所有・共同管理を優先・先行させる従来型の社会主義理論の限界とその欠陥が、20世紀におけるその実践の失敗によって決定的になったにもかかわらず、今なおその根本原因の省察が不徹底であるということ。

 もう1つは、それゆえに、19世紀以来の未来社会論に代わる新たな未来社会論、つまり未来への明確な展望を指し示し、同時に現実社会の諸矛盾をも克服していく具体的な道筋を全一体的に提起し得る21世紀の確かな未来社会論を、いまだに構築し得ずにいるということです。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第2章4節(その2)

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想

4 地球温暖化と「菜園家族」(その2)

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想
4 地球温暖化と「菜園家族」(その2)
(PDF:547KB、A4用紙9枚分)

東ボグド高山、ヤギを追う遊牧民

4 地球温暖化と「菜園家族」(その2)

「環境先進社会」に学ぶ
 今日、「省エネ技術」の開発が進んだ国を「環境先進国」と位置づけ、それが常識になっています。しかし、この考え方は根本から改めなければならない時に来ているのではないでしょうか。
 私たちがめざしているのは、究極において、ほかでもない、高次に発達した自然社会です。不当にも「遅れた国々」とも呼ばれている、伝統的な自然循環型の社会こそ、まさに「環境先進社会」と呼ぶべきかもしれません。
 こうした社会こそ、意外にも、私たちがこれからめざすべき高次自然社会へのもっとも近い、健全な道を歩む可能性を秘めているとも言えるからです。

 私たちは、ある条件のもとで、後進性が先進性に転化するという、この弁証法を歴史のさまざまな局面で見てきました。
 乾燥した大地にわずかに生える草をヤギや羊たちに食べさせ、丹念に乳を搾り、チーズやヨーグルトをつくり、自ら育てた馬やラクダで移動し、家族とともにつつましく生きているモンゴルの遊牧民たち。

 こうした人びとから見れば、豊かな自然と四季に恵まれているはずの日本など、さしずめ「輸入してまで食べ残す、不思議な国ニッポン」に映ることでしょう。
 そして、四六時中テレビから垂れ流すイメージ優先のコマーシャルで人びとの購買欲をかき立て、まだまだ十分に使えるのに、買い捨てを繰り返させる、誠にぜいたくな社会だと、本当は、憤りさえ覚えているのかも知れません。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第2章4節(その1)

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想

4 地球温暖化と「菜園家族」(その1)

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想
4 地球温暖化と「菜園家族」(その1)
(PDF:531KB、A4用紙11枚分)

大地に湧き立つ雲

まえおき
 2023年11月30日から、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにおいて、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が開催されています。
 12月1日にはじまった首脳級会合で、国連のグテーレス事務総長は、各国の温暖化対策について強い危機感を露わにし、「今行動すれば、最悪の混沌を回避できる技術はある。リーダーシップと協力、政治的意思が今、必要だ」と強調。温室効果ガスの削減目標の引き上げを求めました。
 会合には、世界から約140ヵ国の首脳級が参加。温室効果ガス排出量で世界1、2位の中国の習近平国家主席と、アメリカのバイデン大統領は参加しませんでした。

 世界は、気温上昇を産業革命前よりも1.5℃に抑える目標をめざしています。そのためには、2030年までに温室効果ガスの排出を2019年比で43%下げる必要がありますが、現状の各国の削減目標を達成したとしても、2%減にとどまる見通しです。その結果、今世紀末の気温上昇は約3℃に達するといいます。

 この日、公表された文書のたたき台では、「化石燃料や石炭の段階的削減や廃止」「再生可能エネルギーの3倍増」などが盛り込まれましたが、それも曲折が予想されるという何とも頼りない状況です。
 COP28 にあわせて、12月2日、米エネルギー省は、「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言を発表。日本を含む22ヵ国が賛同しました。
 今日の社会・経済システムのあり方から目を逸らし、相も変わらず科学技術の進展とその利用にのみ過剰に期待する世界、とりわけ先進諸大国の温暖化対策の根底にある思想そのものの危うさを指摘せざるをえません。科学技術によってすべてが解決できるとする思い上がった経済成長至上主義に抗して、今こそ新たなパラダイムのもとに、気候変動問題を根本から見直す時に来ているのではないでしょうか。

 今週と来週の2回にわたって掲載する4節「地球温暖化と『菜園家族』」(その1)、(その2)の原文は、2011年3・11東日本大震災・福島原発過酷事故が起こる前の2008年、「原子力ルネサンス」の風潮のさなかに書かれたものです。地球温暖化問題をどう捉え、克服していくのかについて、今日の私たち自身の生産と暮らしのあり方、さらには21世紀の未来社会構想との連関のもとに提起した、初期段階の論考に当たるものです。
 気候変動対策をめぐる議論がますます混迷を深める今、この問題を根源的、包括的に考える上での原点として、あらためてお読みいただければと思います。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第2章3節

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想

3 自然の摂理と「菜園家族」

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想
3 自然の摂理と「菜園家族」
(PDF:564KB、A4用紙10枚分)

図2-4 自然界~「適応・調整」の原理~
図2-4 自然界~「適応・調整」の原理~

3 自然の摂理と「菜園家族」

自然界を貫く生成・進化の「適応・調整」(=「自己組織化」)原理
 21世紀の社会構想、つまり「菜園家族」構想は、ある意味では、自然への回帰によって今日の市場原理至上主義「拡大経済」を止揚し、自然の摂理に適った精神性豊かな社会の構築をめざすものである、と言ってもいいでしょう。
 そこで、「菜園家族」構想をより深く理解するために、ここでは次の2つのことについて根源的次元に立ち返り、あらためて考えてみたいと思います。1つは自然界を貫く生成・進化の原理とはいったい何なのか、もう1つはその原理と私たち人間社会とはどのような関係にあるのか、といった問いです。

 四十数億年前に地球が誕生して以後、気も遠くなるような長い時間をかけて、地球が変化する過程で起きた緩慢な化学合成によって、生命をもつ原始生物は出現したと考えられています。それが、今からおよそ38億年前、太古の海にあらわれた最初の生命です。それは単細胞で、はっきりとした核のない原核細胞生物であったといわれています。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第2章2節

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想

2 「菜園家族」構想とCFP複合社会

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想
2 「菜園家族」構想とCFP複合社会
(PDF:562KB、A4用紙11枚分)

洋梨・りんご・黄色い花

2 「菜園家族」構想とCFP複合社会

週休(2+α)日制のワークシェアリングによる三世代「菜園家族」構想
 それでは「菜園家族」とは、一体いかなるものであるかを具体的に見ていきたいと思います。
 市場原理至上主義の社会にあって、市場競争の荒波に耐えて、家族がまともに生きていくには、まず、生きるために必要なものは大地から直接、できるだけ自分たちの手で作ることを基本に据えなければなりません。
 それによって、家計に占める現金支出の割合をできるだけ小さくおさえ、家計の賃金への依存度を最小限にして、家族が市場から受ける作用を可能なかぎり小さくするのです。いかにも素朴で、単純な方法のようですが、これ以外に、家族が市場競争に翻弄されることから逃れ、自由になる術(すべ)はありません。

 ここで提起する“週休(2+α)日制のワークシェアリングによる両親・子ども・祖父母三世代「菜園家族」”の構想(但し1≦α≦4)は、今日、危機的状況に陥っている家族の再生を基本目標にしています。20世紀の市場競争のなかで、みじめなまでに貶められた人間の尊厳を、21世紀になんとか取り戻したい。「菜園家族」構想は、この長期目標実現のために、新しい社会の枠組みとして提起しているものです。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第2章1節

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想

1 「菜園家族」構想の理念と原理

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第2章  人間復活の「菜園家族」構想
1 「菜園家族」構想の理念と原理
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朝焼けと黒雲

 この章では、人間にとって根源的とも言うべき母胎である「家族」や「地域」にあらためて焦点を当て、その再生について考えていきます。
 その前提として、まずいくつかの基本的なことをとりあげなければなりません。

 市場競争至上主義「拡大経済」の猛威による、人間性の破壊。地球温暖化による、迫りくる地球環境の破局的危機。こうした混迷と閉塞の時代にあって、多くの人々がそこからの脱出を願いながらも、その道を探りあぐねています。
 これまで私たちが良しとしてきた価値を根底から問いただし、ものの見方・考え方を支配してきた既成の認識の枠組み(パラダイム)そのものを革新しない限り、脱出の道は望むべくもないからです。
 このような混沌とも言うべき現代であるからこそ、地域に生きてきた先人たちの過去の思想的遺産から、何を学び、何を継承すべきなのかを考えることは、今までにも増して、大切になってきています。

 ここでは、プロローグで触れた民話『幸助とお花』をとりあげ、そこに込められた先人たちの思いから、今日的意義を汲みとることからはじめましょう。
 その上で、今日の新たな地平に立って、地域再生の拠りどころとなるべき「菜園家族」構想の基本理念や原理をあらためて考え直し、確認したいと思います。

 そして、世界の人々にとって、今日、焦眉の課題となっている地球温暖化問題の解決にとって、「菜園家族」構想は、どのようなかかわりをもっているのかを明らかにし、新たな視点から、その解決への糸口を探りたいと思います。それが今日の地球温暖化問題への取り組みに対してもささやかな警鐘になれば、幸いです。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第1章

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第1章 「辺境」からの視点

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第1章 「辺境」からの視点
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図1-1 東アジアのなかの日本とモンゴル
図1-1 東アジアのなかの日本とモンゴル

1 モンゴル『四季・遊牧』から「菜園家族」構想へ

 私たちは長年の間、モンゴルの遊牧地域を考察してきました。今から振り返ってみると、絶えず日本の現実から出発し、そこに据えられた確かな目で見てきたような気がします。そして、異国にむけられたその目は、再び原点とも言うべき日本の現実に注がれ、この反復の繰り返しによって、さらなる思索を深めることができたように思います。こうした調査研究は、学生や多くの住民・市民との連携のもとで続けられてきました。

 この活動の中で結実したものがあるとすれば、それは、ドキュメンタリー映像作品『四季・遊牧 ―ツェルゲルの人々―』(三部作全六巻、7時間40分) であり、また、日本各地で行われたたこの作品の上映運動と農山村調査を通じて、学生・住民・市民との対話・交流のなかで培われてきた、「菜園家族」構想をあげることができます。

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」プロローグ

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プロローグ 国破れて山河あり

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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」
プロローグ “国破れて山河あり”
(PDF:421KB、A4用紙5枚分)

鈴鹿山中・犬上川上流の大君ヶ畑集落(2021.11.10)
鈴鹿山中・犬上川上流域の
大君ヶ畑(おじがはた)集落

 私たちは、大地からかけ離れ、余りにも遠くに来てしまいました。今、私たちの暮らしや生産のあり方そのものが、根源から問われているのではないでしょうか。
 日本の農村コミュニティは、最悪の事態に直面しています。65歳以上の高齢者が住民の半数を超え、集落の自治や、生活道路の管理、祭りをはじめとする村の行事など、共同生活の維持が困難になった「限界集落」が、全国各地に続出。その数は、7873にも及ぶと言われています。
 こうした集落では、就学年齢より下の子どもはほとんどいません。一人暮らしの老人とその予備軍のみが残り、田畑は荒れ、空き家は朽ちるのを待つばかりです。この先、2641にものぼる集落が、いずれ消滅するとさえ想定されています(国土交通省調査、2006年)。

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