『菜園家族物語 ―子どもに伝える未来への夢へ―』

monogatari

題名 菜園家族物語 ―子どもに伝える未来への夢―
著者 小貫雅男・伊藤恵子
出版社 日本経済評論社
発行年月 2006年11月
判型・ページ A5判、373ページ
定価 本体2,800円+税
ISBN 9784818818873

 子どもたちの小さないのちは、その一つ一つまでもが、実に生き生きと、個性的に輝いている。 むごいことに時代は、不条理の苦しみの世界に小さないのちを追い込んでいく。いのち削り、心病む、終わりなき市場競争。この市場原理至上主義アメリカ型「拡大経済」日本から、いのち輝く「週休5日制」の農的生活への転換を説く。

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本書の特長

 本書『菜園家族物語 ―子どもに伝える未来への夢―』をまとめるにあたっては、挿絵や版画、歴史的な写真、資料など、図版190点余を織り込み、読みやすく、より理解が深まるよう工夫しました。これら多数の貴重な図版は、画家・研究者・市民活動家・農山村集落のみなさん・ゼミ卒業生・出版社・新聞社等、様々な分野の方々のご協力とご厚意により、掲載させていただくことができました。ややもすると無味乾燥なものに流れがちなこの本に、みずみずしい豊かな視覚的イメージを添えていただきました。

 挿絵をご提供くださった水野泰子さん(北海道)、前田秀信さん(長崎県)、志村里士さん(滋賀県)・・・、これら3人の方々の作品に共通していることは、今は過去となった情景に徹しながらも、未来への確かなメッセージが伝わってくることです。それは、すっかり失われてしまった人間のあたたかさを、次代へ甦らせたいという、共通の願いがあるからなのかもしれません。

 本書に込められた「子どもに伝える未来への夢」が、読者の方々の胸に多少なりとも息づきはじめることがあるとするならば、これら作品のお陰であると、心より感謝しています。

水野泰子さん、前田秀信さん、志村里士さんの詳しいご紹介は、こちらをご覧ください。

目次

はじめに

第一章 「菜園家族」構想の基礎

  1. 閉塞の時代―「競争」の果てに
      「拡大経済」と閉塞状況  市場原理と家族  「虚構の世界」  生きる原型
  2. 「菜園家族」構想の基礎―週休五日制による
      三世代「菜園家族」  新しいタイプの「CFP複合社会」 主体性の回復と倫理  「菜園家族」の可能性と展望  予想される困難  家族小経営の生命力
  3. 甦る菜園家族
      ふるさと―土の匂い、人の温もり  心が育つ  家族小経営の歴史性
  4. 「菜園家族」構想と今日的状況
      危機の中のジレンマ  誤りなき時代認識を  「構想」の可能性と実効性  誰のための、誰による改革なのか  グローバリゼーション下の選択  二一世紀の “暮らしのかたち” を求めて

第二章 人間はどこからきて、どこへゆこうとしているのか

  1. 新しい生産様式の登場
      道具の発達と人間疎外  市場競争から恐慌へ  そして衰退過程へ  一九世紀イギリスにおける恐慌と二一世紀の現代
  2. 人間復活への新たな思索と実践
      新しい思想家・実践家の登場  ニューハーモニー実験の光と影  資本主義の進展と新たな理論の登場  人間の歴史を貫く根源的思想
  3. 一九世紀、思想と理論の到達点
      マルクスの経済学研究と『資本論』  人類始原の自然状態  自然状態の解体とその論理  資本の論理と世界恐慌
  4. 一九世紀に到達した未来社会論
      マルクスの未来社会論  導き出された「共有化論」、その成立条件  今こそ一九世紀理論の総括の上に  マルクス「共有化論」、その限界と欠陥

第三章 菜園家族レボリューション ~高度自然社会への道~

  1. 資本主義を超克する「B型発展の道」
      生産手段の再結合 「家族」と「地域」の場の統一理論  「B型発展の揺籃期」 「B型発展の本格形成期」 「CFP複合社会」の展開過程
  2. 人間と家族の視点から
      個体発生と「家族」  「家族」がもつ根源的な意義  人間が人間であるために
  3. 自然状態への回帰と止揚
      生産手段「再結合」の意義  「自然社会」への究極の論理 “流域地域圏社会”の特質―団粒構造  自然界を貫く普遍的原理  「高度に発達した自然社会」へ  今こそ、生産力信仰からの訣別を

第四章 森と海を結ぶ菜園家族

  1. 日本列島が辿った運命
      森と海を結ぶ流域循環  森から平野へ移行する暮らしの場  高度経済成長と流域循環  「日本列島改造論」  断ち切られた流域循環  終末期をむかえた「拡大経済」  幻想と未練の果てに  重なる二つの終末期
  2. 森と海を結ぶ「菜園家族」エリアの形成
      森はなぜ衰退したのか  流域地域圏構想と市町村合併問題  二一世紀、山が動く  森が甦る契機  地域政策の重要性  国・地方自治体の具体的役割  エリア再生の拠点としての「学校」
  3. 「家族」と「地域」―共同の世界
      変化の中の「地域」概念  現存「集落」の歴史的性格 “共同の世界” を支えたもの  身近なことから  「集落」再生の意義
  4. 菜園家族エリアの構造、その意義
      「集落」の再生と「なりわいとも」  「菜園家族」と「くみなりわいとも」  基本共同体「村なりわいとも」  森と海を結ぶ「郡なりわいとも」  非農業基盤の「匠商家族」  「匠商家族」と「なりわいとも」  「なりわいとも」とエリア中核都市の展開  「なりわいとも」の歴史的意義

終章 人が大地に生きる限り

    • 歴史における人間の主体的実践の役割  自己鍛錬と「地域」変革主体の形成  未踏の思考領域に活路をさぐる  理想を地でゆく
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