『日本農業新聞』に『静かなるレボリューション』の書評が掲載されました!

 『日本農業新聞』(2013年9月1日付)の読書欄に、拙著『グローバル市場原理に抗する 静かなるレボリューション ―自然循環型共生社会への道―』(御茶の水書房、2013年6月刊)の書評が掲載されました。以下に転載させていただきます。日本農業新聞2013.9.1書評

  「菜園家族」こそ共生の鍵

                 評者:蔦谷栄一(農林中金総合研究所特別理事)

 “危ない国”の再生に、がっぷり四つに取り組んだ渾身の未来社会論であり、グローバル市場原理に抗する“静かなるレボリューション(革命)”の実践論だ。

本書の最大のキーとなる概念が「菜園家族」である。週休5日制により、5日は「菜園」で農業に励み、2日は雇用という形態で勤務する。ワークシェアで雇用を2・5倍に増やす。「家族は生きるために必要なものは、大地に直接働きかけ、できるだけ自分たちの手で作る・・・・・。現金支出をできるだけ少なく抑え、生活全体の賃金への依存度を最小限に抑制し、市場が家族に及ぼす影響をできる限り小さくする。つまりそれは、家族が過酷な市場原理に抗する免疫を自己の体内につくり出し、自らの自然治癒力を可能な限り回復する・・・・・この免疫的自然治癒力を家族内にとどまらず、家族と家族の連携によって次第に地域に広げ、抗市場免疫の自律的地域世界を構築」していくことを説く。

根底にあるのは大地から引き離され、自立の基盤を失ってしまった賃金労働者の“悲劇”だ。菜園との再結合と、これによる「農民的性格」との融合による自立の基盤の確保を目指す。

大規模経営体ではなく、わが国の条件にかなった中規模専業農家を育成すべきで、これを核に、10家族前後の「菜園家族」が囲む「菜園家族群落」を形成していく。そして「森と海を結ぶ流域地域圏」の再生、さらに「自然循環型共生社会」を展望する。これは資本主義セクターC、家族小経営セクターF、公共セクターPのCFP複合社会でもある。

著者は滋賀県多賀町大君ケ畑の現場で活動しながら調査研究に取り組む。難解ながらも鋭く真実を穿っており、大地への回帰を訴え掛ける。

☆ 評者の蔦谷栄一さん(1948年生まれ、宮城県出身)は、農業・農村を長く研究されてきたと同時に、40代の頃から週末には山梨市牧丘町にて田舎暮らし・自然農法を実践、さらに2005年からは養蚕農家を改築した「みんなの家・農土香(のどか)」を拠点に、東京を中心とした都会の子供たちの田舎体験教室・交流活動蔦谷栄一『共生と提携のコミュニティ農業へ』(創森社、2013年)(後年、大人向けも加わる)に取り組んでこられました。

 最近のご著書『共生と提携のコミュニティ農業へ』(創森社、2013年1月刊)では、日本の農業・農村にとって家族農業を基礎単位にすることが大切であるという視点から、それを軸に多様な人々が関わり合う持続的循環型の地域づくりの可能性について、ご自身の長年にわたる実体験も交えて展開されています。

 昨2013年10月に退職されたのを機に、「農的社会デザイン研究所」 http://www.nouteki-design.com/ を設立。「成長・効率志向の工業的社会から自然循環を優先した生命尊重の社会へと転換していくことが必要であり、“農”がそのカギを握る」(『地域からの農業再興』創森社、2014年1月刊のあとがきより)とのお考えから、山梨でのご活動を充実させ、同時に全国各地のさまざまなグループと連携し、ネットワークを広げていきたいと、決意を新たにされています。